アレクトゥス

アレクトゥス：ブリタンニアの簒奪者

アレクトゥス（生年不詳 - 296年）は、3世紀末のブリタンニアでローマ皇帝を僭称した人物です。彼は、当時のブリタンニアを支配していたカラウシウスの財務官でしたが、後に彼を暗殺し、自ら権力を掌握しました。

生涯

アレクトゥスは、カラウシウスの財務官として仕えていました。293年、西ローマ皇帝コンスタンティウス・クロルスが、カラウシウスの支配下にあったガリアの一部を奪還し、カラウシウスは孤立を深めます。この状況下で、アレクトゥスはカラウシウスを暗殺し、ブリタンニアの支配者となりました。

アレクトゥスの治世に関する記録は多くありません。しかし、彼の発行したコインはカラウシウスのものと類似しており、その分布も似ています。これらのコインはガリア北西部でも発見されており、コンスタンティウスによるボノニア（現在のブローニュ＝シュル＝メール）の奪還が、ブリタンニアにおける反乱勢力の終焉を意味しなかったことを示唆しています。

296年9月、コンスタンティウス・クロルスはアレクトゥスを打倒するためにブリタンニアへ侵攻を開始します。ローマ軍は複数の部隊に分かれて海を渡り、そのうちの一隊は悪天候のために遅延しました。ユリウス・アスクレピオドトゥス率いる別の部隊は、霧に乗じてアレクトゥスの艦隊を回避し、ワイト島を経由してブリタンニアに上陸、アレクトゥスの軍を海岸から撤退させました。その結果、アレクトゥスはコンスタンティウス率いる別部隊によって追いつめられ、戦いの最中に自殺しました。この戦いは、現在のシルチェスター周辺で行われたと考えられています。

本国から遅れて到着したローマ軍は、ロンドンでアレクトゥス軍の残党を虐殺しました。コンスタンティウス自身は戦闘が終わるまでブリテン島に到着できなかったものの、ブリトン人には解放者として迎えられたと伝えられています。

カラウシウスは、自身のコインをプロパガンダとして利用し、「自由」の回復などをスローガンとして掲げていました。コンスタンティウスもこれに倣い、勝利の記念として「永遠の光の修復者」を意味するメダルを鋳造させました。

2019年、ドーバー海峡からアレクトゥスの顔が刻まれた古代コインが発見され、オークションで高額で落札されました。

伝説

ジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王史』では、アレクトゥスはカラウシウスを倒すためにローマから派遣された将軍として描かれています。彼はカラウシウスを打ち倒して支配者となりますが、その支配は圧政であったため、最終的にはアスクレピオドトゥスによって退位させられます。

フィクション

ローズマリー・サトクリフの小説『銀の枝』では、アレクトゥスによるカラウシウス暗殺と、それに続くコンスタンティウスの侵攻が物語の中心的な出来事として描かれています。

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