ブリタンニア

ブリタンニアの概要

ブリタンニア（ラテン語: Britannia）は、古代ローマの属州として設置された地域で、現在のグレートブリテン島南部や周辺の小島々を含みます。この地域には主にケルト系ブリトン人が住んでいましたが、ローマの支配以降、ローマ人や他地域からの移住者も増加しました。ローマの支配は紀元43年から410年まで続き、この間に南部を中心にローマ化が進行しました。特に知られているのは五賢帝の一人であるハドリアヌスが築いたハドリアヌスの長城で、これは北部からの異民族の侵攻を防ぐための重要な防衛拠点でした。

ローマとブリタンニアの接触

ローマとブリタンニアの接触は、紀元前55年と54年のガイウス・ユリウス・カエサルの遠征によって始まりました。しかし、これらの遠征はローマの恒久的な拠点を確立する目的ではなく、ガリア戦争の一部に過ぎませんでした。その後、40年にカリグラが再度遠征を企画したものの、実現には至りませんでした。

本格的にブリタンニアがローマの支配下に入ったのは、43年のクラウディウス帝による遠征です。この時、約4万人のローマ軍がブリトン人部族連合を打破し、カムロドゥヌム（現在のコルチェスター）を占領しました。この占領を経て、ブリタンニア属州が公式に設立されました。最初は南東部のみの支配でしたが、ローマ軍はさらに北部や南西部に進出し、支配領域を広げていきました。

支配の拡大と反乱の歴史

ブリタンニアの支配は、軍事力に基づく統治が行われました。各州には軍団長が総督として任命され、ローマ式の行政が適用されたです。カムロドゥヌムは退役兵達の住居となり、各軍団は辺境の防衛や内政の監視を行いました。各部族はローマ化され、税が課される一方で、従順な部族には権利が部分的に残されました。ただし、従わない部族には軍事力をもって制圧されることもありました。その代表的な反乱がボウディッカの反乱で、これはイケニ族の併合に端を発する一連の動乱でした。

安定とその後の地域内混乱

アグリコラ総督の時代（78年 - 85年）には、ほぼ全域がローマの支配下にありましたが、次第に外圧が増し、反乱が頻発するようになりました。五賢帝の時代には北方の境界が後退し、ハドリアヌスの長城が築かれ、決して安定した時代が続いたわけではありません。ローマ軍が多数駐在し、強力な総督が任命されることが多かったため、ブリタンニアの治安は保たれました。

西暦193年にはセプティミウス・セウェルスがローマ皇帝となり、これに関連する政変を受けてブリタンニアは二つの州に分割されました。この分割政策は、長期にわたり反乱を抑制しましたが、最終的には286年以降にカラウシウスの反乱が勃発しました。それを受けて、コンスタンティウス・クロルスがブリタンニアをさらに4州に分けることとなります。

そして訪れた終焉

4世紀に差し掛かると、ブリタンニアはアイルランド人やサクソン人による二つの大きな攻撃を受け始めました。反乱が相次ぎ、ローマの影響力は次第に衰退していき、407年にはコンスタンティヌス3世がブリタンニアを離れたことにより、ローマの支配は完全に終焉しました。残された住民は自ら防衛体制を整えざるを得ず、410年には皇帝ホノリウスが送った手紙によってこの状況が伺えます。この後、ブリタンニアは古いブリトン人の部族制が復活し、様々な部族国家が乱立しました。

この時代は、ゲルマン系アングロ・サクソン人の侵入を迎えることとなり、混迷の時代が始まります。

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