アロウズ・A18

アロウズA18：1997年シーズンの挑戦と栄光

1997年のF1世界選手権を戦ったアロウズA18は、アロウズチームにとって重要な1台でした。トム・ウォーキンショーによる買収後、チーム名はフットワークからアロウズに戻り、マシン名もFAからAへと変更されました。1996年までリジェに所属していたフランク・ダーニーが設計に携わったものの、信頼性の低さが大きな問題となり、シーズン序盤でダーニーはチームを離脱しました。

マシンの開発には、その後フェラーリから加入したジョン・バーナードが大きな役割を果たしました。バーナードはまず、パーツの強度向上による信頼性確保に取り組みました。これと並行して、空力性能の向上も図られ、ブラジルGPからはエアボックスの形状変更、ドイツGPではダウンフォースに対応した新型フロントウイング、ハンガリーGPではハイダウンフォース向けのリアウイングなど、様々な改良が加えられました。エンジンは、開幕戦でCスペックが使用されましたが、サンマリノGP以降は改良されたDスペックが採用されました。

A18のシャシーはカーボンファイバー製モノコック構造で、全長4700mm、ホイールベース3000mmと、当時のF1マシンとしては標準的な寸法でした。サスペンションは前後プッシュロッド式、ブレーキはブレンボ製キャリパー、BBSホイール、ブリヂストンタイヤを装備していました。パワープラントには、ヤマハのOX11A V型10気筒エンジンを搭載し、700馬力以上の出力を誇りました。

ドライバーは、1996年ワールドチャンピオンのデイモン・ヒルとペドロ・ディニス。開幕戦オーストラリアGPでは、マシントラブルや予選落ち寸前など、信頼性の低さが露呈しました。しかし、バーナードの加入以降、A18の信頼性は向上し、ヒルはイギリスGPで6位入賞を果たしてチームに初ポイントをもたらしました。

そして迎えたハンガリーGP。ヒルは予選で3位を獲得すると、決勝では序盤からトップ争いに加わり、一時トップに立つなど、優勝も視野に入る活躍を見せました。しかし、レース終盤のギアボックストラブルにより失速し、ジャック・ヴィルヌーヴに抜かれて2位でフィニッシュ。アロウズにとって1985年以来12年ぶりとなる表彰台、そして1997年シーズン最高位となりました。このレースでの好成績は、マシンの基本的なバランスの良さ、軽量なヤマハエンジン、そしてブリヂストンタイヤとの相性の良さが要因の一つだったと分析されています。

シーズン終盤のルクセンブルクGPでは、ディニスが5位入賞。最終戦ヨーロッパGPでは、ヒルが予選4位と好位置を獲得するも、決勝でリタイアとなりシーズンを終えました。このシーズン、アロウズはコンストラクターズランキング8位、ヒルはドライバーズランキング12位、ディニスは16位という結果でした。A18は、信頼性という課題を抱えながらも、そのポテンシャルの高さを示したマシンとして、アロウズの歴史に刻まれました。

スペック

シャーシ名：A18
シャーシ構造：カーボンファイバー/コンポジット製モノコック
全長：4700mm
ホイールベース：3000mm
前トレッド：1650mm
後トレッド：1600mm
エンジン：ヤマハOX11A V型10気筒
排気量：2996cc
最高出力：700馬力以上
タイヤ：ブリヂストン
ギアボックス：横置き6速セミオートマチック

記録

コンストラクターズランキング：8位
デイモン・ヒル：予選最高位3位、決勝最高位2位
ペドロ・ディニス：予選最高位7位、決勝最高位5位

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