アワモリ君乾杯!

『アワモリ君乾杯！』：青春と笑いと特撮の融合

1961年10月8日、東宝系で公開された『アワモリ君乾杯！』は、軽妙なコメディと華やかな歌、そして東宝特撮映画へのオマージュが絶妙に融合した、娯楽性豊かな作品です。モノクロ、東宝スコープのフォーマットで制作され、「恋しちゃって照れちゃって歌っちゃって ニキビもバラ色さ！」というキャッチコピーが、当時の若者たちの瑞々しい感性を反映しています。

前作『アワモリ君売出す』に続くシリーズ第2作である本作は、大きく前半と後半の二部構成となっています。前半では、主人公アワモリとヒロイン加代子の出会いと、アワモリの家族であるカバ山家に大金が舞い込むという、二つのストーリーラインが並行して展開されます。

この作品における最大の特徴は、坂本九をはじめとする出演者たちが、街路樹や盆踊り会場などで歌を披露するシーンが数多く挿入されている点です。前作同様、『九ちゃんのズンタタッタ』や『九ちゃん音頭』といった楽曲が、物語のテンポをさらに軽快にしています。

しかし、本作の真骨頂は後半にあります。アワモリとカバ山ダイガク、そしてギャング団が、東宝砧撮影所に潜入するという大胆な展開が待ち受けています。そこでは、同時上映作品『世界大戦争』の撮影現場が舞台となり、フランキー堺らベテラン俳優が演技指導を受ける様子をギャング団がこっそり覗き見したり、アワモリらが撮影現場に乱入するなど、予測不能な笑いの連鎖が繰り広げられます。

さらに、倉庫のシーンでは、東宝特撮映画の歴史が凝縮された、夢のような光景が展開します。『大坂城物語』の大仏、『地球防衛軍』のモゲラ、『宇宙大戦争』のナタール人とスピップ号、『大怪獣バラン』のバラン、『日本誕生』の八岐大蛇、そして前作の同時上映作品『モスラ』のモスラ（成虫と幼虫）といった、往年の特撮怪獣やキャラクターたちが次々と登場し、観客を驚かせ、楽しませます。

この作品には、坂本九を筆頭に、有島一郎、ジェリー藤尾、丘寵児、森山加代子といった実力派俳優たちが名を連ねています。また、加東大介、田武謙三、そしてダニー飯田とパラダイス・キングのメンバーなど、個性豊かな脇役たちも作品に彩りを添えています。さらに、大鵬や柏戸といった大相撲力士や、松林宗恵、フランキー堺、乙羽信子、星由里子といった、当時の映画界を代表するスターたちがカメオ出演している点も見逃せません。

『アワモリ君乾杯！』は、単なるコメディ映画にとどまらず、日本の高度経済成長期における若者たちの生き生きとした姿や、映画制作の裏側といった、多様な要素を盛り込んだ作品と言えます。軽快な音楽、笑いに満ちたストーリー、そして豪華な出演者陣と、様々な魅力が詰まった、まさに時代を反映した、娯楽作品となっています。 東宝特撮映画への愛情あふれる演出は、特撮ファンにとっても見どころの一つと言えるでしょう。秋好馨の原作を基に、古澤憲吾監督、新井一脚本による、時代を超えて愛される傑作映画です。

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