アンガウル州

アンガウル州：歴史と自然が息づくパラオの秘境

アンガウル州は、パラオ共和国に属する州の一つです。その中心となるアンガウル島は、パラオ諸島の南端、ペリリュー島の南西10kmに位置し、手つかずの自然と歴史的な背景を持つ魅力的な島です。

地理と人口

島の総面積は約8平方キロメートル。2015年の国勢調査では、人口はわずか119人と報告されています。小さな島ながら、独自の文化と歴史を育んできました。

珍しい公用語：日本語

アンガウル州の特筆すべき点は、パラオ語と英語に加えて、日本語が公用語として定められていることです。これは、かつてパラオが日本の委任統治領であった時代の影響によるもので、現在では象徴的な意味合いが強くなっています。

アクセスの難しさと魅力

アンガウル島へのアクセスは容易ではありません。コロール島からの定期船は週に1便のみで、スケジュールも頻繁に変更されます。外洋に位置するため、波が高く欠航も多いのが現状です。しかし、その分、手つかずの自然が残されており、訪れる人を魅了します。ペリリュー島のダイビングショップが主催するツアーに参加したり、地元の漁師の船をチャーターするなどの方法があります。また、サーフィンの名所としても知られ、ダイバー向けのコテージホテルも存在します。

戦争の記憶

第二次世界大戦中、アンガウル島は激戦地となりました。島には、米軍と戦い全滅した旧日本軍第14師団歩兵第59連隊第1大隊の兵士や、現地住民などの戦没者を弔う墓苑や、小さな仏教寺院、顕彰碑が建立されています。これらの慰霊碑は、戦争の悲劇と平和の尊さを今に伝えています。

ロラン（LORAN）送信所

1945年から1978年にかけて、アメリカ沿岸警備隊は、島にロラン（LORAN）送信所を設置し、世界的なロランナビゲーションシステムの一部として利用しました。

歴史

第一次世界大戦中の1914年、日本軍はドイツ領だった南洋諸島を占領しました。1916年には、ラサ島燐鉱株式会社の技師・池田が燐鉱調査のためアンガウル島を訪れ、豊富なリン鉱石の埋蔵量を確認しました。ヴェルサイユ条約の結果、1919年に日本は赤道以北の旧ドイツ領地域を委任統治することになり、1922年には南洋庁が発足。池田良介が初代採鉱所長としてアンガウル島に赴任し、リン鉱石の採掘に尽力しました。

第二次世界大戦中、アンガウル島はペリリュー島と共に重要な航空基地として要塞化されましたが、1944年9月17日に米軍が上陸を開始。日本軍は激しく抵抗しましたが、33日間の戦闘の末、玉砕しました。終戦後、アンガウル島はアメリカの太平洋諸島信託統治領の一部となりました。

アンガウル州は、パラオの歴史と文化、そして美しい自然が凝縮された場所です。訪れることは容易ではありませんが、その分、得られる感動も大きいでしょう。パラオを訪れる際には、アンガウル島にも足を伸ばし、その魅力を体感してみてはいかがでしょうか。

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