アンディスピューテッド・アティテュード

スレイヤー『アンディスピューテッド・アティテュード』徹底解説

『アンディスピューテッド・アティテュード』（Undisputed Attitude）は、スラッシュメタルバンド、スレイヤーが1996年にリリースしたカバー・アルバムです。このアルバムは、彼らの音楽的ルーツへの回帰と、パンク・ロックへの愛情を強く打ち出した作品として、ファンや批評家の間で議論を呼びました。

制作背景：パンクへの反骨精神

当初、スレイヤーはクラシック・メタルのカバー・アルバムを構想していましたが、最終的にはパンク・ロックに焦点を当てた作品集へと方向転換しました。この背景には、当時の音楽シーンに対する彼らの反骨精神がありました。ケリー・キングは、「グリーン・デイやオフスプリングといったバンドがパンク・バンドとして世間に認識されていることに、ジェフ・ハンネマンと共に違和感を覚えていた」と語っています。彼らは、自分たちこそが真のパンク精神を持っていると主張したかったのです。

アルバムには、Verbal Abuse、マイナー・スレット、D.I.など、ハードコア・パンクの先駆者たちの楽曲が収録されています。これらの選曲は、スレイヤーのメンバーが若い頃に影響を受けたバンドへの敬意を表すると同時に、彼ら自身の音楽性の幅広さを示すものでもありました。また、「ジェミニ」はスレイヤーのオリジナル曲であり、ジェフ・ハンネマンのサイド・プロジェクト「Pap Smear」の楽曲「キャント・スタンド・ユー」と「Ddamm」も収録されています。

トム・アラヤによれば、カバー曲の選曲は主にハンネマンとキングが行い、アラヤ自身はVerbal Abuseの楽曲を演奏することを特に楽しんだそうです。デッド・ケネディーズの楽曲も試されたものの、最終的にはバンドのスタイルに合わないと判断され、収録は見送られました。

メンバーの変遷

本作の制作後、ドラマーのポール・ボスタフはサイド・プロジェクトを優先するためにバンドを一時脱退し、テスタメントのツアー・ドラマーだったジョン・デッティが後任を務めました。しかし、ボスタフは1997年に復帰し、その後再脱退と再々加入を繰り返しています。

評価と反響

『アンディスピューテッド・アティテュード』は、アメリカのBillboard 200で34位を記録し、スレイヤーにとって3作目の全米トップ40アルバムとなりました。しかし、音楽評論家からの評価は賛否両論でした。オールミュージックのレビューでは、「スレイヤーの通常のアルバムとは異なり、間に合わせで作られた」と評され、5点満点中2.5点が与えられました。一方、『CDジャーナル』では、「原曲を比較的忠実に再現し、またマニアックな選曲といい、熱愛ぶりがよく表出している」と評価されました。

収録曲

以下は、日本盤CDに準拠したトラックリストです。アメリカ盤とヨーロッパ盤では収録曲が異なります。

1. ディスインテグレイション/フリー・マネー
2. ヴァーバル・アビューズ/リーチズ
3. アボリッシュ・ガバメント/スーパーフィシャル・ラヴ
4. キャント・スタンド・ユー
5. Ddamm
6. ギルティ・オブ・ビーイング・ホワイト
7. アイ・ヘイト・ユー
8. フィラー/アイ・ドント・ウォント・トゥ・ヒア・イット
9. スピリチュアル・ロウ
10. シック・ボーイ
11. ミスター・フリーズ
12. ヴァイオレント・パシフィケイション
13. メモリーズ・オブ・トゥモロー
14. リチャード・ハング・ヒムセルフ
15. アイム・ゴナ・ビー・ユア・ゴッド
16. ジェミニ

日本初回盤にはボーナストラックとしてライブ音源も収録されています。

まとめ

『アンディスピューテッド・アティテュード』は、スレイヤーの音楽的冒険心とパンク・ロックへの愛情が詰まった異色のカバー・アルバムです。賛否両論ありますが、彼らのルーツを探求し、新たな一面を発見する上で、興味深い作品と言えるでしょう。

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