トム・アラヤ

トム・アラヤ：スレイヤーを支える重鎮の軌跡

トム・アラヤ（Tom Araya, Tomás Enrique Araya, 1961年6月6日 - ）は、アメリカのスラッシュメタルバンド、スレイヤーのメンバーとして世界的に知られるミュージシャンです。彼の音楽キャリアは、チリでの誕生からアメリカへの移住、そしてスレイヤーでの活動を通じて、多岐にわたる経験によって形成されています。

生い立ちと音楽への目覚め

1961年、トム・アラヤはチリのビニャ・デル・マールで生まれました。5歳の時に家族と共にアメリカのカリフォルニア州に移住し、新たな生活をスタートさせます。ギターを弾く兄の影響を受け、8歳からベースを始め、ビートルズやローリング・ストーンズなどの音楽に親しみました。この頃から音楽への情熱を育み、後のスレイヤーでの活動へと繋がる基礎を築いていきました。

呼吸療法士としての経験

1980年代初頭、トムは父から仕事を探すか、就学するかの選択を迫られます。姉の勧めで、呼吸療法士になるための勉強を始め、2年間、空気の混合比率や採血法、気管挿管などを学びました。この医療分野での知識と経験は、音楽活動とは異なる側面から彼を成長させました。

スレイヤーへの加入と成功

1981年、ケリー・キングからスレイヤーへの参加を要請され、これを受け入れます。デビューアルバム「Show No Mercy」の制作費には、トムが呼吸療法士として働いて得た収入が充てられました。1984年のヨーロッパツアーの際には、病院に休暇を申請するも拒否され、解雇されるというエピソードも。しかし、スレイヤーは着実に成功を収め、トムは音楽の世界でその才能を開花させていきました。

作詞と表現

スレイヤーでは作詞も担当し、連続殺人に関するものなど、過激な内容の歌詞を手がけることが多くあります。初めて作詞を務めた楽曲は「At Dawn They Sleep」です。また、宗教に関わる過激な内容の歌詞を叫ぶ一方で、敬虔なカトリック教徒であるという一面も持ち合わせています。これについて本人は「アートの表現の一つに過ぎない」と語っています。

タトゥーと健康問題

両腕にはタトゥーが彫られており、右上腕部には「荒矢」の漢字、右下腕部には竜、左下腕部には自身と妻子の肖像画が描かれています。近年は過剰なヘッドバンギングにより首に問題を抱え、脱退や解散の可能性も危ぶまれましたが、後に本人が否定。2010年12月には頚部の手術を受け、以降はヘッドバンギングを控えています。

家族を大切にする一面

「俺たちのファン」である妻との間に一男一女をもうけ、来日時にはお土産を買って帰るなど、家族思いな一面も持ち合わせています。また、プライベートで見せる笑顔は「BURRN!」誌上で「100万ドルのスマイル」と評されることもあり、その素顔は非常にフレンドリーな人物です。

使用機材

活動初期にはB.C.Richのベースを使用していましたが、1980年代半ば頃からは「Hill Bass」なる個人工房が製作したベースを長らく愛用していました。1990年代後半からはESPから発売されたトム・アラヤモデルのベースを使用しています。アンプはAmpegを長らく使用していましたが、アルバム「World Painted Blood」からMarshallに切り替えています。初期はフィンガーピッキングでしたが、後にピック弾きに変更。演奏はルート音とギターとのユニゾンが基本のシンプルなベースラインが特徴です。

トム・アラヤは、その音楽性と人間性で、多くのファンを魅了し続けています。彼のスレイヤーでの活動は、スラッシュメタル界に大きな影響を与え、その功績は永遠に語り継がれることでしょう。

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