アント工業

アント工業株式会社

アント工業株式会社は、鉄道車両移動機「アント」の製造・販売を手掛ける日本の輸送用機器メーカーです。「アント」は、同社の登録商標であり、鉄道業界では独自の地位を確立しています。

概要

1959年4月、貨物側線での貨車入換作業を効率化する小型車両移動機「ANT10」の完成を機に、アント工業は朝日トレーディング株式会社として創業しました。1963年4月には、現在の社名であるアント工業株式会社に商号を変更。「アント」という社名は、英語でアリを意味する「ant」に由来し、小さくても力持ちなアリのイメージを重ねています。

主力製品である車両移動機「アント」は、現在、日本国内の車両基地や鉄道工場で、車両の入換作業に利用されています。1985年には、国鉄大船工場向けに金属切削粉の裁断・搬送システムを提案し、同システムの販売にも事業を拡大。2001年には、電気工事業・機械器具設置工事業の認証を取得し、事業領域を広げています。

事業所

本社 - 東京都港区新橋
大阪支店 - 大阪府大阪市淀川区西中島

製品

アント工業は、ガソリンエンジンを使用したジャッキアップ式小型移動機から事業を開始し、その後、ディーゼルエンジンを使用した大型移動機や、軌陸車仕様、蓄電池を使用した電動仕様へと製品ラインナップを拡大しています。

車両移動機

アント工業の車両移動機は、小型でありながらも強力な牽引力を発揮することが特徴です。これは、被牽引車両の自重の一部を本体にかけたり、ウェイトを搭載したりすることで、駆動輪の粘着力を最大限に高めているためです。また、駆動輪踏面の摩擦係数を高めるために、アルミニウム製車輪やウレタン・ゴムなどの素材を使用した車輪を採用しています。外観も、横置きエンジンや左右非対称の車体形状、短い車体全長など、一般的な鉄道車両とは異なる独特なデザインとなっています。

現行製品

ANT18G型: 21馬力のレギュラーガソリンエンジンを使用。ジャッキアップ式。
ANT30シリーズ: 30馬力のディーゼルエンジンを使用。遠隔操作対応仕様あり。
ANT50シリーズ: 55馬力のディーゼルエンジンを使用。遠隔操作対応仕様・軌陸車仕様あり。
ANT100シリーズ: 100馬力のディーゼルエンジンを使用。遠隔操作対応仕様・軌陸車仕様あり。
バッテリーアント: 蓄電池式の電動移動機。ANT30Eシリーズ、ANT60Eシリーズなど。遠隔操作対応仕様・軌陸車仕様あり。

ラインナップにない特殊な需要に対しては、北陸重機工業に製造を委託したり、同社製の20t級小型機関車を供給してもらうなどの対応も行っています。

過去の製品

ANT10型: ANTシリーズ最初の製品。
ANT15型: ANT10型のエンジン出力を向上。改良型のANT15-2型でジャッキを油圧式に改良。ANT15-3型は国鉄標準規格品の認証を得て多数販売。貨物[[鉄道博物館]]で動態保存。
ANT15W型: ジャッキアップの代わりにウェイトを搭載して駆動輪の粘着力を確保。
ANT20型: ANT15型のエンジンを変更した性能向上型。ウェイト搭載タイプはANT20W型。
ANT22シリーズ: 22馬力のガソリンエンジンを使用。ジャッキアップ式。
ANT21-HMT型: ディーゼルエンジン搭載、オイルモーター駆動方式の遠隔操作仕様機。
ANT40RR型: ディーゼルエンジン搭載、オイルモーター駆動方式の軌陸車仕様機。
ANT77型: 大出力（80馬力級）ディーゼルエンジン搭載、オイルモーター駆動方式の大型機。遠隔操作対応仕様・軌陸車仕様あり。

製品銘板には、小型のANT20型などでは「アント車両移動機」、大型のANT77型などでは「アント車両けん引車」と表記されていました。

アント切粉処理システム

金属切削粉の処理システムも「アント切粉処理システム」として販売しています。

「アント」の呼称について

「アント」はアント工業の登録商標であり、同社製の車両移動機の名称として用いられています。しかし、鉄道ファンの中には、アント工業製以外の車両移動機も「アント」と呼ぶ誤用が見られます。同種の機材を総称する場合は、「入換機械」「牽引車」「車両移動機」などの表現を用いるのが適切です。

外部リンク

会社オフィシャルサイト'>アント工業株式会社オフィシャルサイト

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