アンドロニコス・ドゥーカス (ロマノス4世ディオゲネスの部下)

アンドロニコス・ドゥーカスは、11世紀の東ローマ帝国で活躍した貴族であり、軍人、官僚です。彼はプロトヴェスティアリオス（宮廷の衣装係長官）とプロトプロエドロス（高位の裁判官）の地位を歴任しました。彼の人生は、当時の東ローマ帝国の政治と軍事における重要な出来事と深く結びついています。

生い立ちと家系

アンドロニコスは、「カエサル」ヨハネス・ドゥーカスとエイレーネー・ペゴンテイッサの息子として生まれました。父ヨハネスは皇帝コンスタンティノス10世ドゥーカスの兄弟であり、アンドロニコス自身はミカエル7世ドゥーカスの従兄弟にあたります。母方の祖父はニケタス・ペゴニテスという、名門貴族の家系に生まれました。このような背景から、アンドロニコスは東ローマ帝国の支配階級の一員として、幼い頃から高い地位を約束されていたと言えるでしょう。

マンジケルトの戦い

1071年、アンドロニコスはロマノス4世ディオゲネスの対セルジューク朝遠征に参加し、陸軍の司令官として軍を率いました。しかし、マンジケルトの戦いにおいて、彼は後衛を指揮中に皇帝に退却を勧告し、自身も戦場から離脱しました。この行動は、東ローマ帝国の敗北と皇帝の捕縛を招いたとして、後世に大きな非難を浴びることになります。彼のこの判断は、その後の帝国の歴史に大きな影響を与えることになりました。

ロマノス4世の捕縛

1072年、ロマノス4世がセルジューク朝から解放されると、アンドロニコスは兄弟のコンスタンティノスと共に、ミカエル7世と父ヨハネスの命を受け、元皇帝を捕縛するために派遣されました。キリキアでロマノス4世を打ち破り捕縛に成功すると、アンドロニコスは元皇帝を屈服させ、コンスタンティノープルへ護送しました。アンドロニコスはロマノス4世に敵意を抱いていたにもかかわらず、元皇帝の目を潰すという残虐な行為には反対したと伝えられています。

その後の人生

1074年、アンドロニコスは父と共に、ルーセル・ド・バイユールが率いる傭兵軍と戦うために帝国軍を指揮しました。しかし、彼らは反乱軍に捕らえられてしまいます。重傷を負ったアンドロニコスはコンスタンティノープルで治療を受けることが許され、その後解放されました。彼はほどなく回復したものの、1077年に浮腫が原因でこの世を去りました。彼の死は、東ローマ帝国にとって、また一つ大きな損失だったと言えるでしょう。

家族

アンドロニコスは、ブルガリア皇帝イヴァン・ヴラディスラフの娘であるマリアと結婚しました。二人の間には少なくとも5人の子供がおり、彼らもまた、東ローマ帝国の歴史の中で重要な役割を果たしました。

ミカエル・ドゥーカス：protostrator（軍の司令官）の地位を歴任しました。
ヨハネス・ドゥーカス：megas doux（大公）という、海軍司令官の最高位に就きました。
エイレーネー・ドゥーカイナ：1078年に東ローマ皇帝アレクシオス1世コムネノスと結婚し、コムネノス王朝の礎を築きました。
アンナ・ドゥーカイナ：ゲオルギオス・パレオロゴスと結婚しました。
テオドラ・ドゥーカイナ：修道女として生涯を送りました。

アンドロニコス・ドゥーカスは、その生涯において、東ローマ帝国の歴史における重要な岐路に関わりました。彼は、軍事的、政治的な両面でその才能を発揮した一方で、その行動はしばしば批判の対象となりました。しかし、彼が残した足跡は、東ローマ帝国の歴史を語る上で、決して無視することのできないものとなっています。


参照
Polemis, Demetrios I. (1968), The Doukai: A Contribution to Byzantine Prosopography, London: Athlone Press
* Roderick W. Stuart, Royalty for Commoners

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