アンナ・モッフォ

アンナ・モッフォ：美貌と才能に彩られたソプラノ歌手

アンナ・モッフォ（1932年6月27日 - 2006年3月9日）は、アメリカ合衆国出身のソプラノ歌手、テレビ司会者、そして女優として、多岐にわたる才能を発揮しました。特に1960年代に欧米で目覚ましい活躍を見せ、その美貌と美しい歌声で多くの人々を魅了し、「La Bellissima（ラ・ベリッシマ）」、すなわち「最も美しい女性」というニックネームで呼ばれました。

生い立ちと音楽への道

アンナ・モッフォはペンシルベニア州ウェインで生まれ育ちました。高校卒業後、映画界から声がかかるほどの美貌でしたが、当初は修道女を目指していました。しかし、奨学金を得てカーティス音楽学校に進学し、音楽の道へと進むことになります。その後、フルブライト奨学金を得てローマの聖チェチーリア音楽院に留学し、本格的に声楽を学びました。

華々しいオペラ歌手としてのデビュー

1955年、スポレートでドニゼッティの《ドン・パスクワーレ》のノリーナ役でオペラデビューを果たしました。翌年には、後の夫となるマリオ・ランフランキの演出で、プッチーニの《蝶々夫人》にテレビ出演し、その名声を高めます。1957年にはシカゴ・リリック・オペラ座でプッチーニの《ラ・ボエーム》のミミ役を演じ、母国での凱旋デビューを飾りました。同年にはスカラ座にもデビューし、ザルツブルク音楽祭ではカラヤンの指揮でヴェルディの《ファルスタッフ》に出演するなど、着実にキャリアを重ねていきました。

ウィーンでの活躍とアメリカでの成功

1970年代までウィーンを拠点に活動し、《リゴレット》のジルダ役、マスネの《マノン》のタイトルロール、グノーの《ファウスト》のマルグリート役、ビゼーの《カルメン》のミカエラ役、《椿姫》のヴィオレッタ役など、数々の主要な役柄をレパートリーとしました。アメリカでは、1960年から1961年にかけてニューヨークのメトロポリタン歌劇場に出演し、《リゴレット》のジルダ役、《愛の妙薬》のアディーナ役、プッチーニの《トゥーランドット》のリュー役を演じ、ビルギット・ニルソンやフランコ・コレッリといった名だたる歌手たちと共演しました。また、オペラ以外の分野でも、映画《ローマのしのび逢い》に主演するなど、女優としても活躍しました。

その後

1972年にマリオ・ランフランキと離婚し、1974年にはRCAの取締役会長ロバート・サーノフと再婚しました。1970年代には、ヴェルディの《イル・トロヴァトーレ》のレオノーラ役や、《スティッフェーリオ》のリーナ役など、よりドラマティックな役柄にも挑戦しました。イタリア系の両親を持つアンナ・モッフォは、ネイティブなイタリア語を話すことができたため、特にイタリアで人気を博し、1960年から1973年までイタリアのテレビ番組でメイン司会者を務め、イタリアで最も美しい女性の一人にも選ばれました。

晩年

1960年代後半から高音の衰えが目立つようになり、カルメンなどのメゾソプラノ役にも挑戦しましたが、ソプラノ歌手としては40代半ばで事実上引退しました。晩年はニューヨーク市で過ごし、乳癌との闘病生活を送りました。10年にわたる闘病の末、2006年3月9日に脳卒中のため73歳で亡くなりました。彼女はニューヨーク州ヴァルハラのケンシコ墓地に、夫サーノフと共に埋葬されています。

アンナ・モッフォの歌声と美貌は、今もなお多くの人々の記憶に残っています。

もう一度検索