アンヌ・シャルロット・ド・ロレーヌ (1714-1773)

アンヌ・シャルロット・ド・ロレーヌ：王妃候補から修道院長へ

アンヌ・シャルロット・ド・ロレーヌ（1714年5月17日 - 1773年11月7日）は、ロレーヌ公レオポールと、オルレアン公フィリップ1世の娘エリザベート・シャルロットの間に生まれた公女です。彼女はルミルモン女子修道院とモンス女子修道院の修道院長を務め、またエッセン女子修道院とトルン女子修道院の補佐修道院長も兼任しました。ドイツ語名はアンナ・シャルロッテ・フォン・ロートリンゲンです。

生涯

アンヌ・シャルロットは、ロレーヌ公国の宮廷で育ちました。彼女の兄たちは、それぞれ重要な地位に就いています。長兄レオポール・クレマンは早世しましたが、次兄フランソワ・エティエンヌと三兄シャルル・アレクサンドルは、神聖ローマ皇帝カール6世の娘婿となり、フランソワは後に神聖ローマ皇帝フランツ1世として即位しました。姉のエリザベート・テレーズは、サルデーニャ王カルロ・エマヌエーレ3世の後妻となりました。

母がフランス王家の出身であったことから、1721年のルイ15世の戴冠式に参列しました。両親はアンヌ・シャルロットをルイ15世と結婚させようとしましたが、当時のフランス宰相であったブルボン公ルイ・アンリは、コンデ公家の当主という立場から、オルレアン家の縁者であるアンヌ・シャルロットが王妃となることに反対し、元ポーランド王スタニスワフ・レシチニスキの娘マリア・レシチニスカを王妃に選びました。その後、従兄のオルレアン公ルイ1世の後妻となる縁談も持ち上がりましたが、相手方が再婚を望まなかったため、実現しませんでした。

1737年に父が亡くなると、後を継いだ次兄フランソワが、ロレーヌ公国をトスカーナ大公国と引き換えにフランスに譲渡したため、アンヌ・シャルロットは母とともにコメルシーに隠棲しました。

1738年10月、ルミルモン女子修道院の修道院長に選任されました。ルミルモンの修道院長職は、ロレーヌ家の公女が就くことが多く、以前にもアンヌ・シャルロットの夭折した姉エリザベート・シャルロットが形式的に修道院長を務めていました。

1744年に母が亡くなると、兄の婿入り先であるウィーンに移り、義姉のマリア・テレジア皇后からシェーンブルン宮殿に住まいを提供されました。1745年10月4日にフランクフルト・アム・マインで行われた兄フランソワの皇帝戴冠式にも、家族とともに出席しています。

1754年、義姉マリア・テレジアによって、フランドル地方モンスのサント・ウォードリュ女子修道院長に任命され、任地へ赴きました。この地方は当時、オーストリア領ネーデルラント総督を務めていた三兄シャルル・アレクサンドルの統治下にありました。アンヌ・シャルロットは、寡夫となったシャルルが総督を務めるブリュッセルの宮廷で、女主人として振る舞いました。その後も、マリア・テレジアからエッセン女子修道院、トルン女子修道院の補佐修道院長職を授けられましたが、1763年に両方の補佐修道院長職をザクセン公女マリア・クニグンデに譲りました。

1770年4月から9月にかけて、ブリュッセルからウィーンへの最後の旅行をしました。旅の途中の4月末には、フランス王太子（後のルイ16世）に輿入れするため西方へ旅してきた姪のマリー・アントワネットとギュンツブルクで落ち合い、2日間一緒に過ごしました。

1773年、アンヌ・シャルロットは59歳で亡くなりました。彼女の遺骸は、ロレーヌ家の墓廟であるナンシーのサン・フランソワ・デ・コルディア教会に安置されました。

アンヌ・シャルロット・ド・ロレーヌは、王妃候補から修道院長へと転身し、激動の時代を生き抜いた女性でした。彼女の生涯は、当時のヨーロッパの政治情勢と、ロレーヌ家の隆盛を映し出しています。

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