アンバ (潜水母艦)

インド海軍が運用した潜水母艦に、アンバ（INS Amba, ペナントナンバー A54）があります。この艦は、ソ連海軍で運用されていたウーグラ級潜水母艦（正式には1886号計画型と呼ばれる）を基に設計されましたが、インド海軍の特定の要求に合わせて一部仕様の変更が施されています。その変更点の一つとして、兵装が原型となるウーグラ級が搭載していたAK-725 57mm連装砲4基から、より口径の大きいAK-726 76mm連装砲2基に変更された点が挙げられます。

アンバの導入は、当時のインド海軍が必要としていた潜水艦戦力の支援体制を構築するために不可欠でした。1960年代後半から1970年代前半にかけて、インド海軍はソ連製のカルヴァリ級潜水艦（NATOコード名：フォックストロット級）を8隻就役させていました。これらの潜水艦の作戦活動を洋上から支えるために、アンバのような潜水母艦が必要とされたのです。現在、当時のカルヴァリ級潜水艦は2隻のみが現役に留まっています。なお、アンバがその後インド海軍に就役した新型のシシュマール級潜水艦やシンドゥゴーシュ級潜水艦の運用において、どの程度関与したのかは明確ではありません。

1968年12月28日に就役したアンバは、潜水艦の洋上での長期活動を支えるための多様な機能を備えていました。艦内には、潜水艦が洋上で発生させた不具合を修理するための設備や、潜水艦の主兵装である魚雷を整備・補給するための区画が設けられていました。また、乗員の健康維持や緊急時の対応を可能とする医療施設も完備されていました。さらに、ヘリコプター甲板を備えており、HAL Chetakやウェストランド シーキングといったヘリコプターの運用が可能で、物資や人員の輸送、あるいは哨戒活動にも寄与しました。アンバの就役は、インド海軍の潜水艦運用能力に質的な向上をもたらしました。潜水母艦の支援を受けられるようになったことで、アラビア海やベンガル湾といった広大な海域に展開する潜水艦が、基地に戻ることなく長期間にわたり作戦行動を継続することが可能となり、インド海軍の作戦海域を大きく拡張させる要因となりました。

アンバはインド海軍の重要な一員として、その歴史において特筆すべき活動にも参加しています。1971年に発生した第三次印パ戦争では、インド海軍の艦艇として実戦に参加し、その任務を果たしました。

艦の晩年には、残念な事故も経験しています。2001年5月26日、コーチン造船所での定期整備作業中に火災が発生し、この事故により2名の作業員が尊い命を失いました。

長期にわたるインド海軍での任務を終えたアンバは、2006年7月にヴィシャーカパトナム海軍基地において退役しました。アンバは、1971年の第三次印パ戦争に参加したインド海軍のロシア製（当時ソ連製）艦艇の中で、最後まで現役に留まっていた艦としても記憶されています。その存在は、インド海軍の潜水艦部隊が発展を遂げる上で、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

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