アン・メイ

アン・メイ：カンボジア唯一の女王、激動の時代を生きた王女

アン・メイ（在位：1835年 - 1840年）は、カンボジア史上唯一の女王として知られています。彼女の治世は、カンボジアの暗黒時代と重なり、近隣諸国の干渉に翻弄される苦難の時代でした。

生涯

1815年、アン・メイは国王アン・チャン2世と2番目の妃の娘として誕生しました。1834年にアン・チャン2世が崩御した際、息子がいなかったため、王位継承権を持つのはメイを含めた4人の娘たちでした。アン・ドゥオンは自身の叔父にあたります。

しかし、当時のカンボジアは、阮朝（ベトナム）の強い影響下にあり、アン・ドゥオンの即位は許されませんでした。阮朝の明命帝は、軍事遠征によって疲弊したカンボジアに対し、メイを女王に推戴させました。しかし、これは阮朝による傀儡政権樹立を意味し、カンボジアの王族や国民は、生活習慣や服装をベトナム風に改めさせられるなど、強い抑圧を受けました。そのため、国民は阮朝の傀儡となっているメイを支持せず、シャム（タイ）にアン・ドゥオンを国王に推戴させるよう働きかけました。

明命帝はメイの位を女王から王女に降格させ、彼女を嘉定（現在のホーチミン市）へ投獄しました。姉妹を含む王族たちも同様にベトナムへ投獄されました。この状況に対し、シャムはカンボジアにおける覇権を巡り、阮朝との間で第一次泰越戦争が勃発しました。1845年に戦争が膠着状態となると、メイは釈放され、ウドンへ帰郷しました。

1848年にアン・ドゥオンが国王に即位しましたが、アン・メイが再び女王に即位することはありませんでした。その後、彼女は一般人男性と結婚し、2人の娘をもうけ、1874年に夫と共に事故死しました。

激動の時代に翻弄された女王

アン・メイの治世は短く、その間カンボジアは阮朝の支配下に置かれ、苦難の時代を過ごしました。彼女自身も傀儡としての役割を強いられ、投獄されるなど、悲劇的な運命を辿りました。しかし、彼女の存在は、カンボジアの歴史において特別な意味を持っています。激動の時代に翻弄されながらも、カンボジア唯一の女王として、その名を歴史に刻んだのです。

アン・メイの生涯は、カンボジアの苦難の歴史を象徴する出来事として、後世に語り継がれています。

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