アーサー・ピール (初代ピール子爵)

アーサー・ウェルズリー・ピール初代ピール子爵は、19世紀イギリスを代表する自由党政治家の一人です。1829年8月3日生まれ。首相サー・ロバート・ピールの子として生まれ、イートン・カレッジ、ベリオール・カレッジで教育を受けました。

ピールは1865年のイギリス総選挙でウォリック選挙区から自由党議員として当選。その後、長年にわたって庶民院議員として活躍します。1868年から1871年にかけては救貧庁政務次官、その後商務委員会政務次官、大蔵政務次官などを歴任。1880年には第2次グラッドストン内閣で内務次官を務めました。

ピールの政治キャリアにおける最大の転機は、1884年2月26日に庶民院議長に選出されたことです。議長在任中は、公平な議事運営で知られ、庶民院の伝統と慣習に精通した手腕を発揮しました。ブリタニカ百科事典第11版でも、その公正さと的確な裁定が評価されています。

庶民院議長としての職務は、政治的中立性を要求しますが、アイルランド内政自治問題をめぐって自由党を離れ、自由統一党へ参加しました。さらに、宗教上の理由で議会への参加を拒まれていた議員の宣誓問題にも関与し、宗教的少数派の権利擁護にも尽力しました。

1895年、健康上の理由から庶民院議長を辞任。その功績を称えられ、ピール子爵に叙せられ、4千ポンドの年金を受け取りました。同年には、シティ・オブ・ロンドンの名誉市民権も授与されています。

辞任後も、酒類販売免許法に関する王立委員会の委員長を務めるなど、社会貢献を続けました。しかし、委員会内部での意見対立により委員長を辞任。委員会の最終報告書は、ピールの名前で発表され、酒類販売免許の数を大幅に削減することを勧告。この報告は、後の改革運動に大きな影響を与えました。

1862年、ウィリアム・ストラトフォード・ダグデイルの娘アデレードと結婚し、4男2女をもうけました。長男のウィリアム・ウェルズリー・ピールは後にピール子爵位を継承、さらにピール伯爵に叙されています。次男のアーサー・ジョージ・ヴィリアーズ・ピールも政治家、作家として活躍しました。三男のシドニー・ピールも政治家となり、後に準男爵に叙されています。

ピールは1912年10月24日に亡くなりました。彼の政治家としての経歴は、イギリスの議会政治における重要な時代を象徴しており、その公正さと改革への貢献は、今もなお高く評価されています。彼の功績は、アイルランド問題への関与や、宗教的寛容性への尽力、そして、庶民院議長としての公平な議事運営など、多岐にわたります。ピール子爵の生涯は、19世紀イギリス政治史において重要な一章を刻んでいると言えるでしょう。

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