アーダム・ヨハン・フォン・クルーゼンシュテルン

アーダム・ヨハン・フォン・クルーゼンシュテルン（1770年 11月19日 - 1846年 8月24日）は、エストニア出身の著名なロシア海軍提督であり、探検家としても知られています。彼はロシア帝国で初めての世界一周航海を成功させ、その航海は多くの歴史的意義を持つものとなりました。彼が作成した地図には「日本海」を初めて『MER DU JAPON』と記載したことから、日本における重要な歴史的人物とされています。

生涯の始まり

彼はハグディ（現在のラプラ周辺）で生まれ、バルト・ドイツ系の家系に育ちました。クルーゼンシュテルン家はスウェーデンの貴族でもあり、エストニアがロシアに割譲された後もその土地に留まった歴史があります。1770年代後半、彼は海軍士官学校を卒業し、ロシア帝国海軍に入隊。1793年から1799年にはイギリス海軍に派遣され、さらに多くの海上経験を積んでいきました。

世界周航の指揮

1803年、クルーゼンシュテルンはロシア初の世界周航艦隊の指揮官になりました。この艦隊は、皇帝アレクサンドル1世や露米会社のニコライ・レザノフ男爵の支援を受けて結成されたもので、清国や日本との交易の確立を目指していました。彼の艦隊は、旗艦ナジェージタ（Nadezhda）と、ユーリー・フョードロヴィチ・リシャンスキー中尉が操るネヴァ（Neva）という二隻で、様々な国々を経航しながら南米への交易を拡大するための調査も行っていました。

艦隊は出港から多くの地を訪れ、デンマーク、イギリス、カナリア諸島、ブラジルなどで寄港しつつ、大西洋を横断。ホーン岬を回って北太平洋に至りました。この航海の最中、詳細な地図や記録、動植物の標本も収集され、科学的な価値も大きいものとなりました。

しかし、彼が艦隊の隊長として任命されたレザノフ男爵とはしばしば意見の相違があり、対立が生じることもありました。1804年の秋、彼らはカムチャツカ半島を経て日本に向かいましたが、長崎での交渉は不調に終わり、約半年後には再びカムチャツカへ戻ることになりました。

航海記とその後の業績

1806年8月に母港のクロンシュタットに戻ったクルーゼンシュテルンは、その航海の記録をまとめた詳細な書籍『アレクサンドル1世陛下の命令下、1803年から1806年に行った世界周航の記録』を出版しました。この作品は、1810年にサンクトペテルブルクで初版が刊行され、後に数あれた言語でも翻訳されました。特に、1827年に出版された図録には太平洋の地図なども含まれており、これが大いに評価され、ロシア科学アカデミーの会員に迎え入れられる栄誉を獲得しました。

1827年にイギリスおよびさまざまな国での出版を余儀なくされ、その影響力は国際的に広まりました。生涯の後半にはエストニアのキルツィに所在する荘園を購入し、1846年にその地で亡くなりました。

文学における影響

日本の歴史文学において、司馬遼太郎の『菜の花の沖』に登場する高田屋嘉兵衛は、クルーゼンシュテルンの世界周航を徹底的に調査した後に描かれています。また2012年には、スイス生まれのドイツの作家アドルフ・ムシュクによって、長篇小説『レーヴェンシュテルン』が発表され、クルーゼンシュテルンの業績も色濃く描かれています。

クルーゼンシュテルンの業績は、彼の時代の探検精神や国際関係における貿易の重要性を示しており、後の世代への影響をもたらすものでした。

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