露米会社

露米会社の概要

露米会社（ロベイ会社）は、ロシア帝国の勅許を受けて1799年に設立された国策会社であり、その目的は極東および北アメリカにおける植民地経営と毛皮交易にありました。この会社の設立は、ロシアの官僚で外交官のニコライ・レザノフの働きによるもので、パーヴェル1世の勅許によって正式に設立されました。

設立前の背景

露米会社が設立される以前、アラスカの毛皮交易は主にイルクーツクの商人、グリゴリー・シェリホフとその一族によって行われていました。1784年にシェリホフはアラスカ南部のコディアック島に入植地を築き、1790年にはシェリホフ＝ゴリコフ毛皮会社を設立し、アラスカを植民地化していきます。シェリホフが1795年に他界した後、レザノフがその商業活動を引き継ぎ、アラスカでは商人アレクサンドル・バラノフが入植地の拡大に尽力しました。

勅許と経営の歴史

露米会社は、最初の勅許によりロシア領アメリカ（北緯55度以北のアラスカ）、アリューシャン列島、千島列島における毛皮の採取および鉱物の採掘を20年間独占的に行う権利を与えられました。その後の1821年の新たな勅許では、その支配地域が北緯51度まで拡大され、資金提供者には商人や皇族が含まれました。

バラノフは1790年から1818年にかけてアラスカ総督として活躍し、シトカの戦いや新たな入植地の設立を通じて会社に多くの拠点を持たせました。しかし露米会社の経営は当初から厳しく、食糧不足に苦しむ中、レザノフは日本との交易を求め長崎に向かいましたが、鎖国中のため交渉は失敗に終わります。彼の死後、毛皮の供給および食料調達のための取引先の確保は難航しました。

経営の困難と先住民の状況

バラノフの後、海軍士官が露米会社の経営に携わるようになりますが、多くは毛皮交易の知識を欠いており、経営は一層厳しくなりました。1830年代にはハドソン湾会社やアメリカの商人との競争が激化し、アラスカの経済は傾きました。先住民に対する労働要求は厳しく、アリュート族やトリンギット族との間には衝突も多く発生しました。

しかし、経営者たちはその後、学校や病院の設立などに努め、先住民の生活向上に向けた努力を始めました。ロシア正教会の聖職者たちもアラスカに入り、先住民に対する文化的な配慮や虐待の防止に努めました。

アラスカの売却とその影響

1860年代に入ると、露米会社の経営は毛皮動物の乱獲や競争の圧力が影響し、厳しい状況から抜け出せないままでした。この状況を受けてロシア政府はアラスカをアメリカ合衆国に売却することを決定し、1867年に正式に売却されました。これはロシアにとって重要な転機であり、その後アラスカはアメリカの領土となりました。

露米会社の遺産

アラスカの権益はサンフランシスコのハッチンソン・コール＆カンパニーに引き継がれ、最終的にはアラスカ商業会社として新たに運営されることになります。アラスカ商業会社は、デパート経営や機械販売を手掛け、依然としてアラスカのいくつかの小さな村で商業活動を続けています。

さらに、露米会社による早期の探検がアラスカの地名や文化形成に影響を与えており、バラノフやウランゲルに因む地名は今でも残っています。

露米会社の歴史は、ロシアの影響と北アメリカにおける植民地の発展の複雑な相互作用を示す興味深い事例です。

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