アーノルド・ルーゲ

アーノルド・ルーゲの生涯

アーノルド・ルーゲ（Arnold Ruge、1802年9月13日 - 1880年12月31日）は、ドイツの文筆家であり、哲学者、ジャーナリスト、政治活動家として19世紀の激動の時代を生きました。彼の生涯は、青年ヘーゲル派としての思想的遍歴と、政治的闘争に彩られています。

生い立ちと青年期

1802年、ルーゲはリューゲン島のベルゲンで生まれました。19歳でアビトゥーアを修了後、ハレ大学で哲学を学び始め、その後イエナ大学、ハイデルベルク大学へと移りました。学生時代には、秘密結社ブルシェンシャフトの指導的役割を果たし、1824年には「禁止された秘密結社のメンバー」として逮捕され、有罪判決を受けました。

1年間の未決勾留後、コウォブジェクの要塞で15年間の禁固刑を宣告されましたが、1830年に国王の恩赦により釈放されました。獄中では、ソポクレスの『コロノスのオイディプス』やトゥキディデスの『戦史』からペリクレスの演説を翻訳するなど、学問への情熱を失いませんでした。

釈放後、ルーゲはハレのギムナジウムで職を得ますが、自身の地位に不満を抱き辞職。ハレ大学に再入学し、『プラトン美学』で大学教授資格を取得しました。

ヘーゲル学派との関わり

ルーゲの文章に感銘を受けたエヒターマイアーの企画により、1838年に『ドイツの学問と芸術のためのハレ年誌』が創刊されました。この雑誌は、ルートヴィヒ・フォイエルバッハ、フリードリヒ・シュトラウス、ヘルマン・フランク、グリム兄弟ら、青年ヘーゲル派の主要な論客が寄稿し、その機関紙となりました。

1841年には編集所をドレスデンに移し、雑誌名を『学問と芸術のためのドイツ年誌』に変更しました。1844年には、カール・マルクスと共同で『独仏年誌』を出版しますが、その後、意見の相違から二人は決別します。シュレージエンの織工蜂起に対する見解の相違は、マルクスとの決定的な決裂の要因となりました。

1848年革命とその後

1848年革命時には、フランクフルト国民議会議員に選出され、急進的な民主主義者として活動しました。『レフォルム』誌を刊行しますが、プロイセン当局の干渉によりパリへ亡命。その後、ロンドンへ逃れました。

ロンドンでは、ジュゼッペ・マッツィーニらと共に「ヨーロッパ民主主義委員会」を立ち上げますが、すぐに脱退し、ブライトンで教師や作家として生活を送りました。1866年の普墺戦争や1870年の普仏戦争ではドイツを支持し、ビスマルク体制を「真の民主主義国家」とみなすなど、晩年は保守的な立場に傾斜しました。

ルーゲは、祖国に戻ることなく、1880年にブライトンで亡くなりました。彼の遺品は、現在アムステルダム国際社会史研究所によって管理されています。

主な著作

『プラトンの美学』(1832)
『新・美学入門』(1836)
『アネクドータ――最新のドイツ哲学とジャーナル』(1843)
『独仏年誌』（カール・マルクスとの共編著）(1844)
『詩と哲学』(1848)
『民主主義者』(1850)
『新世界』(1856)
『我々が必要とするもの――クーデターのプロイセンに対するメメントモリ』(1861)

参考文献

D・ジュリア『ラルース哲学事典』片山寿昭ら監訳、弘文堂、1998年9月
Harold E. Mah: The End of Philosophy, the Origin of "Ideology"：Karl Marx and the Crisis of the Young Hegelians, 1987

関連項目

ヘーゲル左派
カール・マルクス
ジュゼッペ・マッツィーニ
オットー・フォン・ビスマルク

ルーゲの生涯は、激動の時代の中で、思想と政治の両面で深く関わった人物として、後世にその名を残しています。

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