イェスイ

イェスイ（也遂、也速）

イェスイ（生没年不詳）は、モンゴル帝国の創始者チンギス・カンの妃の一人です。彼女はタタル部出身であり、イェスルンという別名も持ちます。『元史』では第3オルドの長とされ、『集史』では5人の大ハトゥンのうち序列第3位に位置づけられています。

物語的なエピソード

イェスイに関する記述は正史には少なく、『元朝秘史』に記された物語的なエピソードが主な情報源となっています。妹のイェスゲンとの関係が特に興味深く、1202年にチンギス・カンがタタル部を討伐した際、イェスゲンは略奪されてチンギス・カンの寵姫となりました。イェスゲンは、姉イェスイの方が自分より美しいとチンギス・カンに話し、姉を推薦します。チンギス・カンがイェスイを探させたところ、彼女は夫と共に森に逃れていましたが、捕えられてチンギス・カンの妃となります。イェスゲンは姉に自分の地位を譲り、妹もまた引き続き寵愛を受けました。

夫との別れとその後

ある時、チンギス・カンがイェスイ、イェスゲン姉妹を伴って宴を開いた際、イェスイがため息をついていることに気づきます。チンギス・カンが不審に思い調べたところ、イェスイの元夫が紛れ込んでいることが発覚しました。彼は急襲の際に逃亡した後、密かに戻ってきたのです。チンギス・カンは彼を敵意を持つ者として処刑しました。

帝国の危機とイェスイの役割

1218年のホラズム・シャー朝征討に際し、チンギス・カンの身に万が一のことがあった場合に備え、後継者を指名するよう進言したのはイェスイでした。彼女はチンギス・カンの家内を代表して発言し、帝国の安定に貢献しようとしました。1226年の西夏征討にも同行し、チンギス・カンが病に倒れた際には、諸将を集めて善後策を協議させました。チンギス・カンはその後死去しましたが、イェスイは西夏の民を与えられ、その地で余生を送ったとされています。

イェスイは、チンギス・カンの妃として、帝国の重要な局面で様々な役割を果たしました。彼女の物語は、当時の社会情勢や人間関係を垣間見ることができる貴重な資料と言えるでしょう。

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