イオニア諸島合衆国

イオニア諸島合衆国：19世紀のイギリス保護国

イオニア諸島合衆国は、1815年から1864年までの19世紀に南ヨーロッパに存在したイギリスの保護国です。現在のギリシャ共和国に属するイオニア諸島と、ギリシャ本土のパルガ（現在のプレヴェザ県）で構成されていました。この地域は、イオニア七島連邦国を引き継ぐ形で成立しました。

成立の背景

フランス革命戦争以前、イオニア諸島はヴェネツィア共和国の一部でした。しかし、1797年のカンポフォルミオ条約によってヴェネツィア共和国が崩壊すると、1798年から1799年までフランスに併合されました。その後、オスマン帝国とロシア帝国によって占拠され、イオニア七島連邦国が設立されました。これにより、1800年から1807年まで、オスマン帝国とロシア帝国の名目上の宗主権下でギリシャ人が独立した政治を運営しました。

ティルジット条約の後、イオニア諸島は再びフランスによって占拠されました。これに対し、イギリスは1809年にザキントス島のフランス軍を破り、1810年にはレフカダを占領しました。コルフは1814年までフランスの占領下にありましたが、ウィーン会議において、イオニア諸島はイギリスの保護下に置かれることが合意されました。当時、イオニア諸島は英国軍の管理下にありましたが、オーストリア帝国もこの地域での商業的な権益を確保していました。1817年8月26日、初代イギリス国王イオニア諸島名代のトーマス・メートランド卿によって「メートランド律令」が批准され、7島の同盟が成立し、イオニア諸島合衆国の法的地位が確立しました。

政治体制

イオニア合衆国の政府は、イギリス国王によって任命された国王名代の下に組織されました。この国王名代は、イギリス政府の推薦に基づいて任命され、ウィリアム・グラッドストンを含む10名が歴任しました。また、イオニア諸島には『イオニア合衆国の議会』という立法議会が存在し、上下両院制の立法機関として機能していました。

ギリシャ王国への併合

1864年3月29日、イギリス、ギリシャ、フランス、ロシアの担当者は、ロンドン条約を批准し、ギリシャへの主権移譲を正式に決定しました。そして、英国国王名代の宣言により、同年5月28日にイオニア諸島はギリシャ王国に併合されました。これにより、イオニア諸島合衆国としての歴史は幕を閉じました。

著名な人物

イオニア諸島は、著名な人物の生誕地でもあります。その一人が、小泉八雲（ラフカディオ・ハーン）です。彼は1850年にレフカダ島で、現地駐在のイギリス軍医とギリシャ人女性の間に生まれました。

イオニア諸島合衆国は、短期間ながらも独自の歴史を刻み、その足跡は今日のギリシャにも影響を与えています。

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