イキケ地震

イキケ地震

1877年5月9日（現地時間）に、チリ北部イキケ沖で発生した巨大地震です。この地震は、南緯19.6°、西経70.2°付近のペルー・チリ海溝沿いで発生しました。地震の規模はマグニチュード8.3から9.0と推定されています。

地震の概要

地震発生時、イキケはまだペルー領土であり、その南はボリビア領でした。この地域は、ナスカプレートと南アメリカプレートの境界に位置し、プレートの沈み込みによって発生しました。震源域は全長約420kmから450kmに及び、広範囲にわたって断層破壊が起こったと推定されています。

カレタでは5分間もの揺れが感じられ、アリカの南50km付近からコビハ南部にかけて、メルカリ震度階級でVIII以上の激しい揺れを観測しました。

津波被害

この地震によって引き起こされた津波は、チリ沿岸で甚大な被害をもたらしました。アリカでは11.7m、イキケで6m、ウアーニジョスで18m、トコピアで24m、カレタで18mなど、各地で高い津波が観測されています。

さらに津波は太平洋全体に広がり、ハワイ諸島ではヒロで5m、カフルイで6.6m、ニュージーランドのウェリントンで1.5m、オーストラリアのシドニーで0.6mの高さの津波を観測しました。

遠く離れた日本にも津波は到達し、函館で2.4m、釜石で3m、東京湾で0.7mの津波が観測されています。函館や三陸海岸では被害が発生し、房総半島では死者も出ました。

地震と政治的影響

当時、イキケ周辺はチリ、ボリビア、ペルーの国境地帯であり、アタカマ国境紛争の最中でした。1874年の条約によって、ボリビアはチリ企業による硝石採掘を許可する代わりに、税金を課さないことになっていました。しかし、イキケ地震によって大きな被害を受けたボリビアは、1878年にチリの採掘会社に課税を始めました。この課税をチリ企業が拒否したため、ボリビアは硝石の輸出を禁止し、これが太平洋戦争の引き金となりました。

太平洋戦争の結果、チリは大きく領土を拡大し、ペルー南部の一部とボリビアの太平洋沿岸全域を併合しました。これにより、両国は大きな政治的混乱に見舞われました。

地震の規模

イキケ地震のマグニチュードは、M 8.3 - 9と推定されています。地震モーメントは5 ×1022 N・m（Mw 9.1）、あるいはMw 9.0と見積もられています。津波マグニチュードはMt 9.0と推定されています。しかし、この地震は観測網が整備される前の歴史地震であるため、正確な規模を特定するのは困難です。

まとめ

イキケ地震は、巨大な地震と津波によって太平洋沿岸地域に甚大な被害をもたらしただけでなく、政治的な紛争と戦争を引き起こした重要な出来事でした。この地震は、地球のダイナミズムと、それが社会に与える影響を深く考えさせられる事例と言えるでしょう。

参考文献

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関連項目

地震の年表

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