イギリス国立公文書館

イギリス国立公文書館（The National Archives, TNA）は、イギリス政府の公文書や歴史的価値の高い資料を収集・保存する独立機関です。1000年以上にわたる歴史を有する貴重な資料を所蔵しており、イギリスの歴史研究に欠かせない存在となっています。

所在地と構成

国立公文書館は、ロンドンのサウスウエスト地区、キューにある1977年竣工の建物に本部を置いています。この建物は、第一次世界大戦時には政府機関や病院として利用されていた歴史ある場所です。アクセスはロンドン地下鉄キューガーデン駅から便利です。

さらに、ノリッジに事務所、チェシャー州にDeepstoreという資料保管庫を保有し、効率的な資料管理体制を構築しています。イギリス政府の文書保管は、イングランド、スコットランド、北アイルランドでそれぞれ独立した機関が行っており、スコットランド国立公文書館（NAS）、北アイルランド国立公文書館（PRONI）がそれぞれの地域の公文書を管理しています。

歴史

国立公文書館の前身は、1838年に設立されたパブリック・レコード・オフィス（PRO）です。それまでロンドン塔やウェストミンスター寺院などに散在していたイングランドとウェールズの政府文書や裁判記録を、より適切な環境で保存することを目的として設立されました。

PRO設立当初は、資料の閲覧には制限があり、手数料も必要でした。しかし、1851年に著名な知識人たちの請願運動を受け、学術目的などの閲覧が容易になりました。1866年には一般への公開も開始され、より多くの人々が歴史資料にアクセスできるようになりました。1958年の情報公開法制定により、資料収集の手順も整備されました。

1977年にはキューの現在地に移転し、1997年にはイズリントンの家系図資料センターの資料も移管されました。2003年には、PROと歴史的価値のある資料保管委員会の所蔵資料、さらに法務省などの政府機関が所蔵する資料を統合し、「イギリス国立公文書館」として再編されました。2006年には政府情報資料保管オフィス（OPSI）と女王陛下の記録資料保管オフィス（HMSO）も統合され、現在の体制が確立しました。

現代の役割

現在、イギリス国立公文書館は、デジタル化にも積極的に取り組んでおり、オンラインデータベースを通じて多くの資料を公開しています。研究者や一般市民にとって、イギリスの歴史を研究・理解するための貴重なリソースとなっています。膨大な資料を効率的に管理・保存し、アクセス可能な状態に維持することで、イギリスの歴史と文化の継承に大きく貢献しています。また、DROIDという文書保存用ソフトウェアも開発するなど、アーカイブ技術の開発にも力を入れています。

関連機関

スコットランド国立公文書館（NAS）、北アイルランド国立公文書館（PRONI）など、イギリス国内の関連機関との連携も密に行われています。これらの機関と協力することで、イギリス全体のアーカイブ資料を網羅的に管理・保存する体制を構築しています。

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