イグナーツ・ワーグハルター

イグナーツ・ワーグハルター：激動の時代を生きた作曲家・指揮者

イグナーツ・ワーグハルター（Ignaz Waghalter, 1881年3月15日 - 1949年4月7日）は、ワルシャワに生まれ、ニューヨークで没した、ユダヤ系のドイツ人作曲家、そして指揮者です。彼の生涯は、20世紀前半の激動の時代を反映しており、音楽家としての才能と苦難に満ちています。

若き才能の開花と音楽家としての出発

ワーグハルターは幼い頃から音楽の才能を発揮し、ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムに見出されます。ヨアヒムの援助によりベルリン芸術大学に進学し、フリードリヒ・ゲルンスハイムに作曲と指揮を師事しました。当初は作曲家としてその名を知られ、初期の作品である『弦楽四重奏曲』はヨアヒムから高く評価されました。21歳という若さで『ヴァイオリンとピアノのためのソナタ』によりメンデルスゾーン賞を受賞し、その才能を世に知らしめました。

指揮者としての成功とプッチーニ作品の再評価

作曲家としてデビュー後、ワーグハルターはすぐに指揮者としても頭角を現します。ベルリン・コーミッシェ・オーパー、エッセン劇場を経て、1912年からはベルリン市立歌劇場の音楽監督に就任しました。この劇場での活動は、彼のキャリアにおける重要な転換期となります。ワーグハルターは、プッチーニの『西部の娘』『トスカ』『ラ・ボエーム』といった作品のドイツ初演を次々と成功させ、ドイツ国内におけるプッチーニ作品の再評価に大きく貢献しました。彼の功績により、ドイツの聴衆はプッチーニのオペラの魅力を再認識し、その人気は確固たるものとなりました。

渡米と晩年

1923年、ワーグハルターはベルリン市立歌劇場の音楽監督を辞任し、アメリカ合衆国へと渡ります。ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督に就任し、アメリカの音楽界でも活躍しました。しかし、第二次世界大戦が勃発すると、彼の音楽は次第に忘れ去られていきます。

戦後の評価と再評価の動き

第二次世界大戦前期には、ワーグハルターはドイツを代表する作曲家の一人として評価を確立していました。しかし、戦後になると、彼の音楽は急速に過去のものと見なされるようになります。その原因として、彼の作品の特徴である大時代的なロマンティシズムが、戦後の先鋭的な価値観と相容れなかったことが挙げられます。しかし近年、彼の作品の再評価の気運が高まりつつあります。彼の音楽の美しさ、旋律の豊かさ、そしてオーケストレーションの妙が、再び注目を集めています。

主要作品

『弦楽四重奏曲』（1901年）
『ヴァイオリンとピアノのためのソナタ』（1902年）
『ヴァイオリン協奏曲』
オペラ『悪魔の方法』（1911年）
オペラ『マンドラゴーラ』（1914年）
オペラ『遅い客』（1922年）
オペラ『サタニエル』（1923年）

参考文献

Aus dem Ghetto in die Freiheit. Schnurer-Verlag, Marienbad 1936.

外部リンク

Ignatz Waghalter Web Site
イグナーツ・ワーグハルターの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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