イサザ

イサザ（Gymnogobius isaza）

イサザは、スズキ目ハゼ科に属する魚で、特に琵琶湖の固有種として知られています。この魚の特徴は、昼夜を問わず大きな日周運動を行い、漁業資源としても利用されています。また、現地では「イサダ」とも呼ばれることがありますが、琵琶湖以外では異なる魚類を指す事例が多いです。

特徴

イサザの成魚は全長が約5〜8cmと、小型です。頭部が楕円形に平たく、口は目の後ろまで広がっており、外見上の特徴が際立っています。体色は透明感のある黄褐色で、側面には不明瞭な黒褐色の斑点があります。特に第一背鰭の後半には黒点が見られます。この魚は同属のウキゴリ（G. urotaenia）に似ていますが、小型で体側の斑点があまり見えない点、尾柄が長いことから識別されます。また、初めて記載された際にはウキゴリの亜種として分類されていました。

イサザは琵琶湖の北側に生息し、居住環境に適応しています。1964年には相模湖と霞ヶ浦での目撃例がありますが、これらはアユの稚魚とともに放流されたと考えられ、その後の自然繁殖の確認はありません。

生態

この魚は昼間は水深30m以深に生息しており、夜になると表層近くに浮上し、食事を摂取します。イサザは肉食性であり、ユスリカ幼虫のような水生昆虫やプランクトンを捕食します。産卵期は4〜5月で、成魚はこの時期に産卵のため沿岸に寄ってきます。この時期、水温が低いため他の魚の活動が鈍く、イサザは卵や稚魚が捕食されるリスクを避けるため、早めに繁殖を終わらせる生存戦略を持っていると考えられます。オスは岸近くに産卵室を作り、メスを誘導して卵を産ませます。卵は約1週間で孵化し、仔魚はすぐに沖合いへ出て、7月頃から底生生活に移行します。

成魚に成長するまでの過程では、全長4.5cmに到達する魚が翌年春に繁殖しますが、これに達しない個体は次の年に繁殖を行うことになります。通常、イサザの寿命は1年から2年ですが、場合によってはメスが1年目の産卵後に生存し、2年目にも再生産することがあります。

人間との関係

琵琶湖周辺では、イサザは食材として利用されています。漁期は12月から4月で、底引き網や定置網によって漁獲が行われます。その料理方法は、佃煮や大豆との煮付け、すき焼きなど多岐にわたります。

保全状態評価

イサザは絶滅危惧IA類（CR）に分類され、環境省のレッドリストに記載されています。滋賀県版のレッドリストでは注目すべき種として取り上げられています。琵琶湖固有の種であるため、ブルーギルやオオクチバスの捕食が個体数減少に影響を与えています。1950年代に漁獲量が激減した後、1986年までには回復したものの、その後の漁獲量は波があり、1993年には1t以下にまで落ち込む事態も生じました。現在は再び漁獲が行われているものの、かつての数には及んでいません。持続可能な保全策は未だ模索されています。

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