イサーク・アルベニス

イサーク・アルベニス：スペイン音楽の巨匠

イサーク・マヌエル・フランシスコ・アルベニス・イ・パスクアル（1860年5月29日 - 1909年5月18日）は、スペインを代表する作曲家、そして卓越したピアニストでした。彼は、スペインの民族音楽に深く根ざした作品で国際的に知られています。

生涯

カタルーニャ地方のカンプロドンで生まれたアルベニスは、4歳という若さでピアノを演奏するほどの早熟な才能を示しました。彼は自身をユダヤ人と信じていた時期もありましたが、親友のヴァイオリニスト、エンリケ・アルボスによって、ユダヤ人ではないことが証明されています。

ライプツィヒ音楽院での短期留学の後、1876年にはブリュッセル王立音楽院で学びました。1880年にはブダペストでフランツ・リストに師事しようとしましたが、リストがヴァイマルにいたため、その願いは叶いませんでした。少年時代には、パリ音楽院の入学試験で騒動を起こした、国内外を放浪した、中南米へ密航したといった数々の冒険譚が語られていましたが、これらはアルベニス自身が語った作り話であったことが明らかになっています。

1883年、アルベニスは作曲家であり教師でもあるフェリペ・ペドレルと出会い、スペイン音楽の作曲を勧められます。この出会いがきっかけとなり、『スペイン組曲 作品47』などのスペイン音楽の傑作が生まれることになります。同年、彼はロジーナ・ホルダーナと結婚しました。彼女はかつてアルベニスの弟子であり、結婚後、彼らの間には一男二女が誕生しました。

1890年代には、ロンドンやパリに居住し、主に劇場作品の作曲に励みました。近年では、英語による歌劇『マーリン』の録音も発表されています。

1890年代まで、アルベニスはワルツ、エチュード、ピアノソナタ、スペイン風の小品集など、ロマン派のスタイルを踏襲したサロン風のピアノ曲を多く残しました。しかし、1897年の『ラ・ベーガ』以降は、高度なピアノ技巧と旋法を駆使した独自の作風を確立していきます。

1900年、腎臓病を患いながらも、彼はピアノ曲の作曲に情熱を注ぎ続けました。1905年から1909年にかけて、彼の最も有名な作品であるピアノ曲集『イベリア』が完成しました。この作品は、スペイン音楽の枠を超え、ピアノ音楽の傑作として世界中で演奏されています。また、ギター用に編曲されることも多く、親しまれています。

アルベニスは1903年に即興演奏を録音しており、その録音はミルトン・ローファーによって採譜され、楽譜として出版されています。また、2003年から2011年までマドリード市長を務めたアルベルト・ルイス＝ガリャルドンや、フランスの元大統領ニコラ・サルコジの2度目の夫人であるセシリアは、アルベニスの曾孫にあたります。

1909年、アルベニスは腎臓病のためにフランスのカンボ・レ・バンで亡くなり、バルセロナのモンジュイック墓地に埋葬されました。彼の絶筆となった『アスレーホス』は、友人であるエンリケ・グラナドスによって完成されました。

作品

アルベニスの作品の大部分はピアノ曲で占められていますが、歌劇などの作品も残しています。オーケストレーションは得意ではなかったようで、「ピアノ協奏曲」と「カタルーニャ狂詩曲」では、友人のトマス・ブレトンの協力を得ています。

歌劇

魔法のオパール
サルスエラ「花盛りのサン・アントニオ」
ヘンリー・クリフォード
マーリン
ランスロット（未完）
ペピータ・ヒメネス

管弦楽曲

狂詩曲「カタルーニャ」

協奏曲

ピアノ協奏曲イ短調 Op.78「幻想的協奏曲」（1967年にスコア発見）
スペイン狂詩曲 Op.70

ピアノ曲

古風な組曲
マズルカ
スペイン舞曲
舟歌
組曲「エスパーニャ」Op.165　第2曲「タンゴ」が有名
組曲「イベリア」全12曲
ピアノソナタ（6？曲、一部紛失）
ラ・ベーガ
アスレホス（未完、グラナドス補筆完成）
ナバーラ（未完、セヴラック補筆完成）
スペインの歌 Op.232
スペイン組曲　全8曲
アストゥリアス（伝説）
演奏会用アレグロ

歌曲

6つのバラード
ベッケルの詩

関連項目

アルベニス (小惑星) - イサーク・アルベニスに因んで命名された

アルベニスの作品は、その情熱的で独特なスペインの色彩感により、今日でも多くの人々に愛されています。

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