イザベル・ド・クレルモン

イザベル・ド・クレルモン（Isabelle de Clermont）は、15世紀の南イタリア、ナポリ王国の歴史において重要な役割を果たした女性です。彼女は、1424年頃にコペルティーノで生まれ、1465年3月30日にナポリで亡くなりました。イタリア語ではイザベッラ・ディ・キアロモンテ（Isabella di Chiaromonte）と呼ばれ、また、ターラント公国の相続人であったことからイザベッラ・ディ・ターラント（Isabella di Taranto）とも呼ばれています。彼女は、ナポリ王フェルディナンド1世（ドン・フェランテ）の最初の王妃であり、その生涯は政治的な結婚と、ナポリ王国の権力構造に深く関わっていました。

生い立ちと結婚

イザベルの父は、南仏ラングドック出身の騎士トリスタン・ド・クレルモンであり、彼は一代でナポリ女王ジョヴァンナ2世の重臣にまで上り詰めました。母はターラント公ライモンド・オルシーニ・デル・バルツォとレッチェ女伯マリー・ダンギャンの娘であるカテリーナです。母方の祖母マリーは、ナポリ王ラディズラーオ1世の3番目の王妃でした。この背景から、イザベルは貴族の中でも有力な家系に生まれました。

1445年5月30日、イザベルはカラブリア公ドン・フェランテと結婚しました。フェランテはナポリ王アルフォンソの庶子でしたが、後継者として定められていました。この結婚は、アルフォンソ王による政治的な策略の一環でした。彼は、ターラント公家の女子相続人であるイザベルを息子と結婚させることで、息子の庶子としての出自の弱みを補い、さらに確固たる経済基盤を築こうとしました。同時に、王国内に自分の支持者を増やす狙いもありました。この結婚によって、ターラント公一族はアルフォンソ王の同盟者とならざるを得なくなり、王国の政治的な安定に寄与しました。

ナポリ王妃とターラント女公

1458年に夫のフェランテがナポリ王位を継承すると、イザベルはナポリ王妃となりました。その後、1463年には伯父のターラント公ジョヴァンニ・アントニオが亡くなったことで、イザベルはターラント女公の称号も受け継ぎました。しかし、その2年後の1465年、イザベルは亡くなり、遺体はナポリのサン・ピエトロ・マルティーレ教会に安置されました。

子女

イザベルとフェランテの間には6人の子供がいました。彼らは後にヨーロッパの王侯貴族と結婚し、それぞれの家系に大きな影響を与えました。

アルフォンソ2世（1448年 - 1495年） - ナポリ王。
エレオノーラ（1450年 - 1493年） - フェラーラ公エルコレ1世・デステと結婚。
フェデリーコ1世（4世）（1452年 - 1504年） - ナポリ王（後に廃位）。
ジョヴァンニ（1456年 - 1485年） - ターラント大司教、枢機卿。
ベアトリーチェ（1457年 - 1508年） - ハンガリー王マーチャーシュ1世、後にウラースロー2世と結婚。
フランチェスコ（1461年 - 1486年） - サンタンジェロ公、ビシェーリエ侯爵。

イザベル・ド・クレルモンは、その政治的な結婚と、ターラント公国を継承したことによって、ナポリ王国の歴史において重要な役割を担いました。彼女の生涯は、当時のヨーロッパにおける貴族の結婚が単なる個人的なものではなく、国家の権力と安定に深く関わっていたことを示しています。また、彼女の子孫たちは、ヨーロッパの王侯貴族と婚姻関係を結ぶことで、その血統を広げ、歴史に名を残しました。

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