マリー・ダンギャン

マリー・ダンギャン（Marie d'Enghien, 1367年 - 1446年5月9日）は、中世後期、南イタリアのナポリ王国で大きな影響力を持った貴族女性です。彼女はレッチェ女伯として知られ、その生涯は二度の結婚と、それに伴う政治的、個人的な試練に彩られています。

生い立ちと相続

マリーは、レッチェ伯ジャン・ダンギャンとサンチャ・デル・バルツォの間に生まれました。父方の祖母イザベル・ド・ブリエンヌは、アテネ公国公位の請求者であり、南イタリアの大領主でもありました。ジャンは、広大な所領の一部であるレッチェとカストロを相続しました。1380年に父ジャンが亡くなると、最初は兄のピエールが家督を継ぎましたが、彼が1384年に夭逝したため、マリーが後継者となりました。

結婚と波乱の時代

同じ1384年、マリーは叔父であるブリエンヌ伯ルイ・ダンギャンの取り計らいで、ターラント公ライモンド・オルシーニ・デル・バルツォと結婚しました。マリーは、美貌と勇敢さを兼ね備え、冒険を好む女性であったと伝えられています。しかし、1406年、夫ライモンドがナポリ王ラディズラーオ1世を裏切った直後に急死すると、状況は一変しました。国王軍はターラントを包囲し、マリーは勇敢に抗戦しましたが、最終的に王からの和平条件として結婚を要求されました。彼女は町を守るために、この再婚を受け入れざるを得ませんでした。マリーとラディズラーオ王の婚礼は、ターラントのアラゴン城付属礼拝堂で執り行われました。

ナポリ王妃として

マリーはナポリ王妃となりましたが、ラディズラーオ王との間には子供を儲けることはできませんでした。1414年にラディズラーオ王が亡くなると、彼の姉であるジョヴァンナ2世女王が王位を継ぎました。ジョヴァンナ女王はマリーを憎み、投獄しました。しかし、女王の夫となったラ・マルシュ伯ジャック2世・ド・ブルボンの手引きによって解放され、マリーと子供たちはターラント公領を回復することができました。

その後の人生と遺産

マリーはその後も長く生き、1446年に78歳で亡くなりました。彼女の生涯は、激動の時代を生き抜いた強い女性の象徴として語り継がれています。特に、孫娘のイザベル・ド・クレルモンが1445年にナポリの王位継承者であるカラブリア公ドン・フェランテと結婚した際には、婚姻の証人として立ち会いました。マリーとラディズラーオ王の結婚は、ターラントの町を破壊から守った記念碑的な出来事として、現在もターラントではマリーア・デンギエンの婚礼の仮装行列を行う民俗行事として伝えられています。

子女

最初の夫ライモンドとの間には、以下の子供たちがいました。

ジョヴァンニ・アントニオ：ターラント公、バーリ公爵、レッチェ伯
マリーア：第3代アトリ公爵アントニオ・アクアヴィーヴァと結婚
カテリーナ：コペルティーノ伯トリスタン・ド・クレルモンと結婚、ナポリ王妃イザベル・ド・クレルモンの母
ガブリエーレ（1453年没）：ウジェント伯、ヴェノーザ公爵、レッチェ伯

マリー・ダンギャンは、その生涯を通じて、南イタリアの政治と社会に大きな影響を与え、その遺産は今もなお、人々の記憶に刻まれています。

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