エルコレ1世・デステ

エルコレ1世・デステ（Ercole I d'Este, 1431年10月26日 - 1505年1月25日）は、ルネサンス期のイタリアで重要な役割を果たしたモデナ＝レッジョ公、フェラーラ公です。彼はニッコロ3世・デステとリッチャルダ・ダ・サルッツォの間に生まれ、「北風とダイアモンド」という異名を持っていました。

生涯と教育

エルコレ1世は、1445年から15年間、ナポリ王アルフォンソの宮廷で教育を受けました。この経験が彼の芸術への深い理解と庇護の精神を育み、ルネサンス期の芸術の重要なパトロンとしての地位を確立する基礎となりました。この時期に、彼は幅広い知識と教養を身につけ、後の政治活動や文化振興に大いに役立てました。

公位継承と結婚

1471年、異母兄ボルソ・デステの死去に伴い、エルコレ1世はフェラーラ公位を継承しました。1473年には、ナポリ王フェルディナンド1世の娘エレオノーラ・ダラゴーナと結婚し、エステ家とナポリ王国との同盟を強固なものとしました。この結婚は、彼の政治的立場を強化し、後の紛争においても重要な役割を果たしました。

子供たち

エルコレ1世とエレオノーラの間には6人の子供が生まれました。長女イザベッラはマントヴァ侯フランチェスコ2世・ゴンザーガと結婚し、次女ベアトリーチェはミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァと結婚しました。長男アルフォンソは後を継いでモデナ＝レッジョ公、フェラーラ公となりました。また、フェランテ、イッポーリト、シギスモンドも歴史に名を残しています。彼はまた、ルクレツィアとジューリオという2人の庶子もいました。特にジューリオは、兄アルフォンソによって投獄され、釈放後には時代遅れの服装を嘲笑されるという悲劇に見舞われました。

フェラーラ戦争と外交

1482年から1484年にかけて、エルコレ1世はヴェネツィア共和国と戦いました。これはフェラーラ戦争として知られています。彼は宿敵デッラ・ローヴェレ家のローマ教皇シクストゥス4世と同盟を結びましたが、最終的にはバニョロの和議で戦争を終結させました。この和議で、フェラーラは教皇軍の破壊から救われました。その後、エルコレ1世はイタリア戦争で中立を保ち、教皇国との友好関係を維持しました。また、彼は息子アルフォンソの妻としてルクレツィア・ボルジア（教皇アレクサンデル6世の娘）を迎えることに成功し、この結婚はエステ家に大きな領土をもたらしました。

文化と芸術の庇護

エルコレ1世は、文化と芸術の庇護者としても知られています。彼は多くのフランス系フランドル人の音楽家をフェラーラに招聘し、フェラーラを当時の音楽の中心地にしました。アレクサンダー・アグリコラ、ヤーコプ・オブレヒト、ハインリヒ・イザーク、アドリアン・ヴィラールト、ジョスカン・デ・プレなど、著名な音楽家がフェラーラで活躍しました。また、詩人ボイアールドを家臣とし、若い詩人ルドヴィーコ・アリオストを家令に任命しました。さらに、建築家ビアジオ・ロセッティに命じて市の城壁を拡張させ、フェラーラの都市景観を大きく変えました。

宗教とサヴォナローラ

エルコレ1世は、教会改革者ジローラモ・サヴォナローラの熱心な賞賛者であり、彼の霊的・政治的助言者でした。1490年代には、サヴォナローラと頻繁に書簡を交わし、フィレンツェの教会関係者にサヴォナローラの解放を求めるなど、彼を支持しました。しかし、サヴォナローラは1498年に処刑され、エルコレの努力もむなしく終わりました。


エルコレ1世・デステは、その生涯を通じて、政治、文化、芸術の各分野において重要な役割を果たしました。彼の庇護によって、フェラーラはルネサンス期の重要な中心地の一つとなり、多くの芸術家や文化人が活躍しました。彼の治世は、フェラーラの歴史において重要な時代であり、彼の遺産は今日まで続いています。

もう一度検索