ライモンド・オルシーニ・デル・バルツォ

ライモンド・オルシーニ・デル・バルツォの生涯

ライモンド・オルシーニ・デル・バルツォ（Raimondo Orsini del Balzo, 1350/55年頃 - 1406年1月17日）は、中世後期ナポリ王国において、その富と権勢で知られた貴族です。ターラント公、バーリ公、ベネヴェント公、ソレート伯、ビシェーリエ伯、レッチェ伯といった数々の称号を保持し、ナポリ王国の大司馬、教会軍の旗手としても活躍しました。当時のナポリ王国で、王に次ぐ勢力を誇った人物とされています。

生い立ちと初期の活動

オルシーニ家の出身で、父はナポリ王国最高法官・大法官を務めた第3代ノラ伯ニコラ・オルシーニ、母はジョヴァンナ・ディ・サブラーノです。父方の祖母スヴェーヴァ・デル・バルツォを通じてデル・バルツォ家の血を引いています。少年期や青年期の記録はほとんど残っていませんが、1372年2月にはアヴィニョン教皇庁に仕える騎士として史料に登場します。

1375年、祖母スヴェーヴァは、自身の姓「デル・バルツォ」を継承することを条件に、孫のライモンドにソレート伯領を相続させるよう遺言しました。しかし、父ニコラは長男ローベルトに伯領を与えたため、ライモンドは自らの所領を得るための活動を始めます。この出来事がきっかけで中東への巡礼を行ったという伝説もありますが、確証はありません。1378年2月には、ドイツ騎士団の騎士としてプロイセンに上陸し、ハールィチ・ヴォルィーニ戦争に参加した記録が残っています。

政争への関与と変節

1381年にイタリアへ帰国すると、ジョヴァンナ1世女王退位後のナポリ王位継承を巡る争いに巻き込まれます。当初はアンジュー公ルイ1世を支持しましたが、1382年にはドゥラッツォ公カルロ3世に忠誠を誓い、その後1384年には再びアンジュー公陣営へ移るという変節を繰り返しました。アンジュー公の死後、王位はドゥラッツォ公が獲得します。カルロ3世王が教皇ウルバヌス6世をノチェーラ・インフェリオーレで包囲した際には、ライモンドは1385年7月に教皇を助けて避難させました。

この事件の直後、ライモンドはレッチェ女伯マリー・ダンギャンと結婚します。マリーの伯父であるブリエンヌ伯ルイ・ダンギャンがアンジュー公の側近であった縁によるものでした。これによりライモンドはレッチェ伯領の支配者となり、財力を背景に兄にソレート伯領の返還を要求、1399年に父の死後正式にソレート伯領を獲得します。その後もテッラ・ドトラント一帯を中心に多くの所領や称号を得ていきました。

ターラント公への昇進と最期

ドゥラッツォ家のラディズラーオ1世がナポリ王に返り咲くと、ライモンドはアンジュー家の与党であったにも関わらず、ラディズラーオからターラント公領の相続を認可されるという約束を得て寝返ります。1399年4月、ターラント公の地位を得ますが、1405年には、教皇インノケンティウス7世がラディズラーオ王を破門し、アンジュー家側へ移る者を免罪すると布告すると、再びアンジュー家陣営へ鞍替えしました。

しかしその直後の1406年年明けにライモンドは死去し、彼の最後の裏切りを知った時にはすでに故人となっていました。遺骸はガラティーナのサンタ・カテリーナ・ダレッサンドリア教会に安置されています。この教会は、彼自身が建立したものです。

記録の抹消

13世紀後半の南イタリアで、ライモンドは政治的に重要な役割を担っていましたが、彼に関するナポリの宮廷文書はわずか6つしか現存していません。これは、裏切りを重ねた彼に関する記録を、ラディズラーオ王が抹消しようとしたためであると考えられています。

子女

ライモンドは、妻マリー・ダンギャンとの間に以下の子供たちをもうけました。

ジョヴァンニ・アントニオ - ターラント公、バーリ公、レッチェ伯
マリーア - 第3代アトリ公爵アントニオ・アクアヴィーヴァと結婚
カテリーナ - コペルティーノ伯トリスタン・ド・クレルモンと結婚。ナポリ王妃イザベル・ド・クレルモンの母
ガブリエーレ - ウジェント伯、ヴェノーザ公、レッチェ伯。1453年没

ライモンド・オルシーニ・デル・バルツォは、その複雑な政治的立場と、波乱に満ちた生涯を通じて、南イタリア史にその名を刻みました。

もう一度検索