イシナギ

イシナギ（石投）

イシナギは、スズキ目スズキ科イシナギ属に属する海水魚の総称です。地方によってはモロコとも呼ばれますが、これはハタ科のクエの別名としても使われるため、混同しないように注意が必要です。

概要

イシナギは、体長が2メートルに達する大型魚です。イシナギ属には、日本海やカリフォルニアに生息するコクチイシナギ（Stereolepis gigas）と、日本各地に分布するオオクチイシナギ（Stereolepis doederleini）の2種が一般的に認められています。しかし、通常「イシナギ」という場合は、オオクチイシナギを指すことが多いです。

日本におけるイシナギ

オオクチイシナギは、北海道から高知県にかけての南日本、特に北海道に多く分布し、石川県沖の深さ400～500メートルの岩礁域に生息しています。産卵期には、水深150メートル程度まで浮上してきます。

イシナギは、その大きさと引きの強さから、大物釣りの対象魚として非常に人気があります。5～6月の産卵期には水深150メートル付近まで浅くなるため、この時期が狙い目です。

日本列島では古くからイシナギが利用されており、神奈川県小田原市の羽根尾遺跡からは縄文時代前期のイシナギの遺体が出土しています。また、山梨県富士川町の鰍沢河岸跡からは、江戸時代後期から明治期の地層からアブラボウズとともにイシナギ属の遺体が出土しており、駿河湾から富士川舟運を通じて運ばれたと考えられています。これらの出土状況から、イシナギが古くから日本の食文化に関わってきたことがわかります。伊豆や三浦半島では、イシナギを専門に狙う漁法も存在していました。

食中毒のリスク

イシナギの肉は美味であり、刺身、フライ、煮付けなど、様々な料理で食されています。しかし、イシナギの肝臓は食品衛生法により食用が禁止されています。これは、肝臓に大量のビタミンAが含まれており、摂取すると急性のビタミンA過剰症（食中毒）を引き起こす可能性があるためです。

ビタミンA過剰症の主な症状は、激しい頭痛、嘔吐、発熱などであり、食後30分から12時間程度で発症します。肝臓は絶対に食べないようにしてください。

分類

イシナギ属（Stereolepis）に属する主な種は以下の通りです。

オオクチイシナギ (Stereolepis doederleini)：日本各地に分布。
コクチイシナギ (Stereolepis gigas)：日本海やカリフォルニアに生息。英名はGiant sea bass。

脚注・外部リンク

* イシナギ-厚生省通達による有毒魚(東京都福祉保健局)

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