クエ

クエ（垢穢）について

クエ（垢穢、学名：Epinephelus bruneus）は、スズキ目ハタ科に属する大型の海水魚です。主に九州地方では「アラ」とも呼ばれ、これはアラ属の魚とは異なりますが、各地で様々な地方名が存在します。例えば、日本各地では「モロコ」、愛知県では「マス」、三重県では「クエマス」、四国では「アオナ」とも呼ばれています。一般的にクエを漢字で表記する場合は「垢穢」が使われますが、当て字で「九絵」と書かれることもあります。

形態

クエの成魚は、全長が最大120cm、体重が50kg以上に達することがあります。和歌山県西牟婁郡すさみ町沖では146cm、40kgの個体が釣れた記録があります。この魚は日本産ハタ類の中で非常に大型の種に分類されており、釣り人にとっては憧れの的とされています。体色は淡い緑褐色で、体に6本の黒っぽい横縞があります。若い個体は黒く美しい縞模様を持っていますが、成長するにつれて模様は薄れます。特に大型の個体にはほとんど模様が見られなくなり、他の類似種と見分けるポイントは尾びれの色や体形です。

生態

クエは主に西日本や東シナ海、南シナ海の沿岸域に分布しています。好みの生息環境は外洋に面した岩礁やサンゴ礁で、主に水深約50mまでの地域に生息しています。普段は単独で生活し、昼間は岩の隙間や洞窟で休んでいますが、夜に活動的になり、獲物を求めて泳ぎ回ります。食事は肉食で、イカや岩礁域の魚類、伊勢海老などを好んで食べます。産卵は5月から7月にかけて行い、幼魚は秋に見られ始めます。成魚に成長するにつれて深場へ移動し、性転換を行うため、雌よりも雄の方が大きくなります。

利用

養殖

クエは漁業用として釣りや定置網漁で漁獲されますが、岩陰に隠れがちな習性があるため、天然物はなかなか捕まえられません。そのため、各地では養殖が進められています。たとえば、長岡技術科学大学では水質浄化システムを使った養殖の実験が行われており、近畿大学では和歌山県で養殖と研究が進められています。また、臨海での養殖にも取り組まれており、静岡県では温排水を利用した完全養殖に成功した事例があります。

また、近年ではタマカイとの交配種である「クエタマ」が開発され、クエよりも成長が速いという特徴があります。しかし、2023年にはこのクエタマが脱走し、鹿児島湾での目撃情報が相次いでいることも報じられています。

食材としての評価

クエは非常に旨味成分が多く、白身魚としては脂の乗りも豊富です。そのため、一般に高級食材として知られています。取り扱いのお店では、特に夏から秋にかけての漁獲が好評です。また、冬には鍋料理に使われるため「旬は冬」とも言われています。刺身や鍋用に人気のある食材で、「クエ食ったら他の魚食えん」と言われるほどの美味しさを持つ特別な魚です。

地域によっては、特に行事料理としても用いられ、佐賀県の「唐津くんち」では特別な料理として振る舞われます。かつては一部地域で高級魚とされ、近年では養殖魚が流通することで全国的にも知られるようになっています。価格は天然物が1kgあたり最大で1万円以上、養殖物でも3,000円前後と言われ、「本マグロ以上の高級魚」とされることも少なくありません。このように、クエは日本の海の恵みを代表する食材の一つと言えるでしょう。

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