イシュメ・ダガン1世

イシュメ・ダガン1世：激動の時代を生きたアッシリア王

イシュメ・ダガン1世（在位：紀元前1780年 - 紀元前1741年）は、古アッシリア王国時代のアムル系アッシリア王です。父は強大な王として知られるシャムシ・アダド1世でした。

若き日のイシュメ・ダガン

イシュメ・ダガン1世は、父王シャムシ・アダド1世によってエカラトゥムの王に封じられ、その周辺地域を監督する役割を担いました。しかし、マリの王に任じられていたヤスマフ・アダドと同様に、父王からの指示を仰ぐ立場にあり、行動は厳しく制限されていました。彼とヤスマフ・アダドがシャムシ・アダド1世との間でやり取りした書簡は、当時の状況を知る上で貴重な資料となっています。

これらの書簡から、イシュメ・ダガン1世に関する多くの情報が得られています。

王としての苦難

紀元前1780年、シャムシ・アダド1世の死後、イシュメ・ダガン1世は王位を継承しました。生前の報告書から、彼は数々の戦いで勝利を収めた優秀な将軍であったことがわかっています。しかし、王となってからのアッシリアの勢力は、父の時代に比べて明らかに衰退しました。

即位に際してアッシリア各地で反乱が発生し、王位を安定させた後も、山岳民族トゥルクー族の侵入に苦しめられました。息子のムト・アシュクルと共に各地を転戦しましたが、領土は後退の一途をたどりました。紀元前1777年頃には、エシュヌンナ王イバル・ピ・エル2世の攻撃を受け、マリを喪失。弟ヤスマフ・アダドは消息不明となりました（その後、マリではジムリ・リムが王座を獲得します）。

混迷を極めるアッシリア

紀元前1771年には、エシュヌンナの新王シリ・シンの攻撃を受け、アッシリアの政局はさらに混乱しました。このような状況下で、イシュメ・ダガン1世は、父の時代には格下の相手であったバビロン第1王朝の王ハンムラビに臣従の意思を示さざるを得ませんでした。

ハンムラビはメソポタミアの主要な国家を次々と併呑し、紀元前1764年頃からアッシリア方面への拡大を図り始めました。紀元前1755年までの間に、ハンムラビ王の攻撃を受け、アッシリアはバビロン第1王朝の支配下に置かれたと言われています。その後のイシュメ・ダガン1世の消息は不明です。

バビロンによる支配の範囲や程度については諸説あり、明確にはわかっていません。

イシュメ・ダガン1世は、強大な父王の築いた империю を引き継ぎましたが、激動の時代の中で苦難の道を歩むことになりました。彼の治世は、アッシリアの歴史における転換期であったと言えるでしょう。

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