イスラーム教徒による性的マイノリティー迫害

イスラーム圏における性的マイノリティー迫害：歴史的文脈と現代の法解釈

イスラーム圏における性的マイノリティー、特に同性愛者に対する扱いは、歴史的背景と現代の法制度、そして宗教的解釈の複雑な絡み合いによって特徴づけられます。歴史的に見れば、ペルシア、トルコ、インドなどの一部地域では、寛容な雰囲気が存在し、権力者たちが美少年の小姓を身につけることも珍しくありませんでした。しかし、現代においては状況は一変し、イランなどでは死刑が科せられるなど、厳しい処罰が現実のものとなっています。

この現状を巡っては、激しい議論が展開されています。イスラーム法学者の中には、クルアーンやハディース（預言者ムハンマドの言行録）を根拠に、同性愛行為を禁じる解釈を行い、現代の厳しい処罰を正当化しようとする者もいます。一方、反イスラーム主義者の中には、イスラームの教義そのものが性的マイノリティーの権利を擁護できないと主張する者も存在します。しかしながら、リベラルなイスラーム解釈の存在や、歴史的に見られた寛容な事例を考慮すれば、このような単純な二項対立は必ずしも適切とは言えません。

死刑の可能性がある国々

2019年現在、シャリーア（イスラーム法）に基づき、同性愛行為に死刑が科せられる可能性のある国々には、アフガニスタン、ブルネイ、イラン、モーリタニア、ナイジェリア（北部の一部地域）、パキスタン、カタール、サウジアラビア、ソマリア（ジュバランド）、スーダン、イエメンなどが挙げられます。ただし、これらの国々においても、実際に死刑が執行される頻度や、適用される条件には差があります。例えば、アフガニスタンではタリバン政権崩壊以降死刑判決は下されておらず、モーリタニアやパキスタンでは死刑の執行例は確認されていません。カタールにおいても、ムスリム間の同性愛行為で、かつ片方または両方が既婚者である場合にのみ死刑が適用される可能性があるとされています。

各国における状況

イランでは、同性愛行為は犯罪とされ、死刑を含む厳しい刑罰が科せられます。処刑された事例も数多く報告されており、国際社会から強い非難を浴びています。イランの同性愛者は、性的指向を隠して生活せざるを得ず、多くの亡命者が出ています。亡命申請が拒否された場合、イランへの送還と死刑執行の危険性があり、国際的な人権問題となっています。

エジプトでは、イランほどではないものの、同性愛者に対する弾圧が依然として存在し、摘発や逮捕が繰り返されています。しかし、死刑が執行されるケースは確認されていません。

サウジアラビアでは、宗教警察にあたる勧善懲悪委員会が同性愛者を厳しく取り締まり、逮捕・死刑となるケースがあります。

モロッコやガンビアなど、他の国々でも、同性愛者に対する迫害が問題となっています。特に、前ガンビア大統領ヤヒヤ・ジャメは、同性愛者への激しい憎悪を公言し、国外退去か死刑を選択させる通告を出したことで知られています。

また、シリアとイラクで活動した「イスラム国」（ISIL）も、シャリーアを根拠に多くの同性愛者を殺害したとされています。

結論

イスラーム圏における性的マイノリティー迫害は、宗教的解釈、法制度、政治的状況などが複雑に絡み合った問題です。歴史的文脈を踏まえつつ、現代の状況を理解し、多様な意見を尊重しながら、人権擁護の観点からこの問題と向き合う必要があります。単純な善悪の二元論を超えて、多角的な視点からの考察が不可欠です。

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