ヤヒヤ・ジャメ

ヤヒヤ・ジャメ：ガンビアの独裁者

ヤヒヤ・アブドゥル＝アズィーズ・ジェムス・ジュンクング・ジャメ（Yahya Abdul-Aziz Jemus Junkung Jammeh）は、1965年生まれのガンビアの政治家であり、同国の第2代大統領を務めました。その経歴は、軍事クーデターによる政権掌握から、数々の強権的な政策、そして亡命へと至る劇的なものでした。

クーデターによる権力掌握

1984年にガンビア軍に入隊したジャメは、着実に昇進を重ね、1994年7月22日、無血クーデターによってダウダ・ジャワラ大統領から政権を奪取しました。ジャメは、ジャワラ政権の腐敗と民主主義の欠如を理由にクーデターを正当化しましたが、その背景には、ガンビア軍内部の不満も存在していました。

大統領として

1996年、ジャメは愛国再建同盟を設立し、大統領選挙で当選を果たします。しかし、この選挙は海外の監視団から「自由と公正さからは程遠い」と批判されました。その後も、選挙制度を一部改革しながら、2001年、2006年、2011年と大統領に再選され、長期政権を築きました。

しかし、その長期政権下では、数々の問題行為が起こりました。

エイズ「治療薬」騒動

2007年、ジャメはエイズの「治療薬」を開発したと発表しましたが、実際にはハーブを煮出しただけの代物であり、専門家からは「偽りの期待を抱かせる」と非難されました。彼はエイズ患者に抗ウイルス薬治療を止めさせ、自らが作った「治療薬」を服用するように命じました。この行為は、患者を危険にさらし、感染拡大のリスクを高めるものとして、国際的な批判を浴びました。

同性愛者の弾圧

ジャメは、同性愛を強く非難し、2008年には同性愛を禁止する法律を制定しました。彼は国内の同性愛者に対し、「国外退去か、頭を切り落とされるか」を選ぶように通告し、「イランよりも厳しい弾圧」と批判を浴びました。また、国連総会での演説で同性愛を「アッラーと人間に対する冒涜」と発言するなど、差別的な言動を繰り返しました。

魔女狩り

2009年には、親族の死に魔女が関与していると疑い、ギニアから呪術師を呼び寄せて魔女狩りを行いました。この魔女狩りによって、多くの女性が拉致、暴行され、死亡する事件も発生しました。魔女狩りを恐れてセネガルに脱出する住民が相次ぎ、また、魔女狩りを批判した野党指導者を逮捕するなど、恐怖政治を行いました。

国際社会からの孤立と失脚

2016年の大統領選挙で、ジャメは野党候補のアダマ・バロウに敗北。当初は敗北宣言をしたものの、その後「不正があった」として結果を受け入れず、大統領職に居座る姿勢を示しました。この行動に対し、国際社会はバロウを正当な大統領として支持し、西アフリカ諸国経済共同体（ECOWAS）は軍事介入も辞さない構えを見せました。

最終的に、ギニアとモーリタニアの大統領による説得を受け、ジャメは退陣を表明。ギニア経由で赤道ギニアに亡命しました。亡命の際には、国庫から多額の資金を持ち逃げしたとも報じられています。

その後

2020年には、ジャメの邸宅が山火事で焼失したと報じられました。その後の消息は不明な点が多く、現在も赤道ギニアに滞在していると考えられています。

ヤヒヤ・ジャメの政治は、独裁的な手法と人権侵害によって、ガンビア社会に大きな傷跡を残しました。彼の失脚は、民主主義と人権尊重の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

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