イズカニコウモリ

イズカニコウモリ（伊豆蟹蝙蝠）

イズカニコウモリ（学名: Parasenecio amagiensis）は、キク科コウモリソウ属に分類される多年草です。伊豆半島とその周辺地域にのみ分布する日本固有種であり、希少な植物として知られています。

特徴

イズカニコウモリは、地下に細長い匍匐枝を伸ばし、その先端から新しい個体を形成して増殖します。そのため、しばしば群生している様子が観察されます。茎は直立して高さ40cmから60cmほどに成長し、ほとんど分枝しません。

葉は通常2枚が互生し、下部の葉は腎臓のような形をしており、幅が広く、長さ12cmから13cm、幅22cm程度になります。葉の先端は丸みを帯び、縁には不規則な鋸歯があります。基部は深く切れ込んだ心形です。葉の質感は洋紙のようで、表面にはまばらに毛が生え、裏面の葉脈に沿って絹のような毛が散生しています。葉柄には翼がなく、下方の葉の葉柄は11cmから12cmの長さで、基部は茎を抱き込み、葉鞘は完全に合わさって筒状になります。上部の葉は小さく、葉身は長さ7cmから8cm、幅10cmから12cm程度で、葉柄も3cmから3.5cmと短くなります。

花期は9月から10月で、頭状花序が総状円錐花序を形成し、上向きに斜めに付きます。花はすべて両性の筒状花で構成され、頭花の花柄は長さ3mmから8mmで、縮れた毛が密生しています。総苞は狭い筒状で、長さは約11mm。総苞片は1列に5個並び、広線形で先端は尖っています。1つの頭花には4個から5個の小花が付き、花冠の長さは約11mmです。果実は円柱形の痩果で、長さは5mmから6mm。痩果には毛がなく、冠毛は白色で長さ7mmから9mmです。染色体数は2n=58です。

分布と生育環境

イズカニコウモリは、伊豆半島および箱根外輪山の南東側の限られた範囲にのみ分布しています。主にシイ・カシ帯からブナ帯下部の夏緑林の沢沿いの湿った林内に生育します。

名前の由来

和名の「イズカニコウモリ」は、伊豆半島に分布し、葉の形が同じコウモリソウ属のカニコウモリに似ていることに由来します。

分類

イズカニコウモリは、コウモリソウ属のヤマタイミイガサ節に分類されます。近年、分子系統学的研究の結果から、本種を含むヤマタイミイガサ節の植物は、独立したTaimingasa属として分離されることが提唱されており、YListでもその分類を採用しています。

保全状況

イズカニコウモリは、生育地の破壊や環境の変化により、個体数が減少しており、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧II類（VU）に指定されています。生育環境の保全が重要な課題となっています。

ギャラリー

(ギャラリーの記述は省略)

脚注

(脚注の記述は省略)

参考文献

(参考文献の記述は省略)

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