コウモリソウ属

コウモリソウ属（Parasenecio）

コウモリソウ属は、キク科に属する多年草のグループで、アジアを中心に約60種が分布しています。日本にも多様な種が存在し、山菜として利用されるものもあります。

特徴

コウモリソウ属の植物は、一般的に以下の特徴を持ちます。

地下茎: 短く直立するものから、数珠状に横走するもの、地下匍匐枝を伸ばすものなど、多様な形態があります。
茎: 直立します。
葉: 茎に互生し、長い葉柄を持ちます。葉柄に翼があるものとないものがあります。葉身は、はじめ外巻きで、傘をすぼめた形になるものがあります。
葉柄基部: 茎を抱いて葉鞘となり、その上縁部が肥大して「耳」となるのが特徴です。葉柄の基部の茎の抱き方や耳の形態は、種の分類形質となりますが、変異も多いです。
頭状花序: 茎の先に総状、散房状、円錐状につきます。まれに単生することもあります。頭花は筒状花のみからなり、1頭花あたり1-20個の小花があります。
花冠: ふつう5裂し、白色から淡黄色、まれに黄色、白色に赤みを帯びるものがあります。
総苞: ふつう狭筒形、ときに筒形になり、総苞基部に苞がないものと線形または広卵形の苞があるものがあります。総苞片は1列に並び3-8個あります。
花柱分枝: 先は棍棒状になり、熟すと半曲します。
果実: 円柱形の痩果で、基部方向に狭まり、縦方向に稜があります。
冠毛: 白色、まれに帯赤色です。

分布

コウモリソウ属は、アジアとアリューシャン列島に約60種が分布しており、特に日華植物区系区に多くの種が見られます。

分類

コウモリソウ属の学名については、かつて Cacalia 属が用いられていましたが、タイプ種の解釈が多様であるなど、属の概念が不明確であったため、国際藻類・菌類・植物命名規約において廃棄名扱いとなりました。

現在では、アジア産のものは Parasenecio 属、ヨーロッパ産のものは Adenostyles 属、北アメリカ産のものは Arnoglossum 属が用いられています。

利用

イヌドウナやモミジガサなど、一部の種は山菜として利用されますが、すべての種が食用になるわけではありません。

日本に分布する主な種

日本には、以下のようなコウモリソウ属の種が分布しています。

タイミンガサ
ヤマタイミンガサ
ニシノヤマタイミンガサ
イズカニコウモリ
モミジコウモリ
モミジガサ
テバコモミジガサ
ウスゲタマブキ
タマブキ
ミヤマコウモリソウ
カニコウモリ
ミミコウモリ
コモチミミコウモリ
サドカニコウモリ
ヒメコウモリ
オオカニコウモリ
ショウナイオオカニコウモリ
ツクシコウモリ
コウモリソウ
オクヤマコウモリ
ヤクシマコウモリ
イヌドウナ
コバナノコウモリソウ
オガコウモリ
ツガルコウモリ
ヨブスマソウ
ニッコウコウモリ
ハヤチネコウモリ
オオバコウモリ

各種類は生育環境や葉の形状、花期などに違いがあり、それぞれ固有の特徴を持っています。中には絶滅危惧種に指定されているものもあります。

参考文献
門田裕一「秋田県産コウモリソウ属(キク科)の一新種,オガコウモリ」『植物研究雑誌』第80巻第4号
佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本 III 』、1981年、平凡社
大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩『日本の野生植物』5号（改訂新版）、平凡社、2017年9月
門田裕一、三浦憲人「コウモリソウ属（キク科キオン連）の分類学的研究 II．佐渡島産の1 新種，サドカニコウモリ」『植物研究雑誌』第92巻第4号

関連情報
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