イソシアン酸メチル

イソシアン酸メチルについて

イソシアン酸メチル（methyl isocyanate、化学式C2H3NO）は、その単純な構造から最も基本的なイソシアネートの一つとされています。この化合物は、H3C−N=C=Oという形で原子が結合しており、他の名称としてイソシアナトメタン、メチルカルビルアミン、略してMICとも呼ばれます。1888年にイソシアン酸のメチルエステルとして初めて発見されて以来、様々な分野で利用されるようになりました。

用途

イソシアン酸メチルは、農薬を合成する際の重要な中間体として知られています。具体的には、カルバメート系農薬であるカルバリル、カルボフラン、メソミル、アルジカルブの製造に用いられています。また、この化合物はゴムや接着剤の製造にも広く利用されており、産業界での需要が非常に高いことが特徴です。

危険性

しかし、イソシアン酸メチルは非常に強い毒性を持っているため、取り扱いには極めて注意が必要です。0.4 ppm以下の濃度でも吸引、経口摂取、皮膚接触によって、咳や呼吸困難、胸部不快感といった健康被害を引き起こす可能性があります。また、目や鼻、喉、皮膚にも損傷を与える可能性があります。濃度が21 ppmを超えると、肺水腫や肺気腫、肺出血、気管支炎といった重篤な症状が現れ、最悪の場合、死に至ることもあります。このため、イソシアン酸メチルの臭いを感じることができるのは、許容される濃度の3倍以上からです。このような危険性を考慮し、取り扱いに際しては十分な安全対策が求められます。

特に、1984年12月にインドのボパールで発生した化学工場事故は、イソシアン酸メチルの危険性を世界に知らしめることとなりました。この事故では、約4万kg（40トン）のイソシアン酸メチルが住宅地に流出し、15,000人以上の方が命を落とす結果となりました。この悲劇が影響を及ぼし、ソニーエナジー・デバイスの社名変更の契機ともなったことは記録に残る重要な出来事です。

関連項目

イソシアン酸メチルに関連する化合物としては、イソチオシアン酸メチルが挙げられます。これらの化合物も同様に、適切な取り扱いや安全対策が必要です。

参照資料

イソシアン酸メチルに関するリスクや安全性については、国際化学物質安全性カード（ICSC:0004）を参照することが有効です。日本語版は国立医薬品食品衛生研究所によって提供されています。

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