イタリアのトルコ人

イタリアのトルコ人（Il Turco in Italia）

『イタリアのトルコ人』（伊: Il Turco in Italia）は、ジョアキーノ・ロッシーニが1814年に作曲したオペラ・ブッファです。フェリーチェ・ロマーニが台本を手掛け、ミラノのスカラ座で初演されました。

作品概要

原題: Il Turco in Italia
台本: フェリーチェ・ロマーニ
作曲: ジョアキーノ・ロッシーニ
演奏時間: 序曲8分、第1幕1時間10分、第2幕1時間
初演: 1814年8月14日、スカラ座

作曲の経緯と特徴

ロッシーニは以前に『アルジェのイタリア女』で成功を収めましたが、本作ではトルコ人男性の視点からコミカルなオペラを試みました。

しかし、『イタリアのトルコ人』は、詩人というドラマの進行役を中心に、トルコ人男性に恋をする女性と、彼女を巡る人々の愛の悲喜劇を描く、哲学的な要素も含む作品です。ロマーニの台本は、詩人を物語の進行役に据えることで、メタオペラ的な構造を持ち、当時としては前衛的な試みであったと言えるでしょう。

初演時は『アルジェのイタリア女』の二番煎じと見なされ、正当な評価を受けませんでしたが、1970年代以降、その真価が認められるようになりました。

登場人物と配役

セリム（トルコの王子）：バス
ドンナ・フィオリッラ（ジェローニオの妻）：ソプラノ
ドン・ジェローニオ（フィオリッラの夫）：バス
ドン・ナルチーゾ（フィオリッラの崇拝者）：テノール
プロスドーチモ（詩人、ジェローニオの知人）：バリトン
ザイーダ（セリムの元恋人）：メゾソプラノ
アルバザール（セリムの友人、ジプシー）：テノール

楽器編成

フルート: 2
オーボエ: 2
クラリネット: 2
ファゴット: 2
ホルン: 2
トランペット: 2
トロンボーン: 1
ティンパニ: 1
大太鼓: 1
シンバル: 1
弦五部: 第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
ピアノ・フォルテ、チェロ（レシタティーヴォ用）
混声合唱

音楽ナンバー

全2幕構成で、16のナンバーから構成されます。

第1幕

No.1 導入曲
No.2 カヴァティーナ（ジェローニオ）
No.3 カヴァティーナ（フィオリッラ）、合唱、カヴァティネッタ（セリム）、二重唱（フィオリッラ、セリム）
No.4 三重唱（プロスドーチモ、ジェローニオ、ナルチーゾ）
No.5 四重唱（フィオリッラ、セリム、ジェローニオ、ナルチーゾ）
No.6 二重唱（ジェローニオ、フィオリッラ）
No.7 フィナーレ

第2幕

No.8 二重唱（セリム、ジェローニオ）
No.9 合唱とカヴァティーナ（フィオリッラ）
No.10 二重唱（セリム、フィオリッラ）
No.11 レチタティーヴォ・アッコンパニャートとアリア（ナルチーゾ）
No.12 アリア（アルバザール）
No.13 合唱
No.14 五重唱（ジェローニオ、ナルチーゾ、ザイーダ、セリム、フィオリッラ、合唱）
No.15 レチタティーヴォ・アッコンパニャートとアリア（フィオリッラ、合唱）
* No.16 フィナーレ

あらすじ

物語はナポリ近郊のジプシーのキャンプから始まります。トルコの王子セリムを探すザイーダ、喜劇の題材を探す詩人プロスドーチモ。詩人は、浮気な妻フィオリッラに手を焼くジェローニオに目を付け、彼らを物語の登場人物にすることを決意します。

フィオリッラは、イタリアを観光中のセリムに一目惚れし、セリムも彼女に興味を持ちます。それを知ったナルチーゾは激怒。詩人は、嫉妬深い夫、気まぐれな妻、熱烈な崇拝者、そしてセリムの元恋人ザイーダという構図を思い描きます。

セリムとフィオリッラが愛を語り合う中、ジェローニオが帰宅し激怒しますが、フィオリッラの態度に圧倒され、セリムに丁重に振る舞わざるを得ません。ナルチーゾはジェローニオの弱腰に憤慨します。混乱の中、セリムとフィオリッラは海岸でデートの約束をします。

セリムはフィオリッラとトルコへ逃避行を計画しますが、詩人がザイーダとセリムを再会させると、セリムはザイーダへの情熱を再燃させます。フィオリッラ、ナルチーゾ、ジェローニオも浜辺に現れ、二人の女性の激しい争いが繰り広げられます。

第2幕

セリムはジェローニオに、フィオリッラを金で買うか誘拐すると脅します。フィオリッラはザイーダに、セリムが自分を選ぶはずだと主張しますが、セリムはなかなか決断できません。ザイーダはセリムの優柔不断さに失望し、フィオリッラは再びセリムを誘惑しようとします。

詩人はジェローニオに、フィオリッラの誘拐計画を警告します。仮面舞踏会で、セリムがフィオリッラと逃亡するというのです。詩人は、ザイーダとジェローニオに、フィオリッラとセリムと同じトルコの衣装を着せて、誘拐を阻止しようとします。ナルチーゾもトルコ人に変装することを決意します。

舞踏会で、仮面をつけた人物たちが入り乱れます。フィオリッラはナルチーゾの腕に、セリムはザイーダの腕をつかみます。ジェローニオは、セリムとフィオリッラのカップルと間違えて憤慨します。詩人は、混乱の中、物語を終わらせようとしますが、フィオリッラはナルチーゾと共にイタリアに残ることを決意し、セリムはザイーダの元に戻ります。こうして物語はハッピーエンドを迎えます。

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