イタリアの競馬

イタリアの競馬：栄光と凋落の歴史

イタリアにおける競馬の歴史は古く、古代ローマ時代の戦車競走にまで遡ります。中世には、パーリオと呼ばれる独自の競走も行われていました。近代競馬の導入は19世紀初頭、サラブレッドの輸入と同時に始まりました。1808年のサラブレッド輸入を契機に、正式なルールと専用の競馬場を備えた近代競馬がイタリアに誕生しました。その後、1880年にはイギリスのジョッキークラブをモデルとしたイタリアジョッキークラブが設立され、競馬統括団体としての役割を担うようになりました。1881年にはカパネッレ競馬場が建設され、1884年にはイタリアダービーにあたるデルビーイタリアーノが創設されるなど、イタリア競馬は発展を遂げました。2000年には、UNIRE（Unione Nazionale per l’Incremento delle Razze Equine）、2011年にはASSI（Agenzia per lo sviluppo del settore ippico）と競馬統括機関の名称が変更され、2012年にはイタリア農業食料林業省（Mipaaf）が競馬開催権を継承するなど、組織運営面でも変遷を繰り返しました。しかし、2019年には唯一のG1競走であったリディアテシオ賞がG2に降格、事実上イタリアからG1競走は消滅しました。さらに2020年には、国際セリ名簿基準書における格付けがパート2国に降格するなど、イタリア競馬を取り巻く状況は厳しさを増しています。

イタリア競馬の特徴

イタリア競馬の特徴として、速歩競走の盛んさが挙げられます。国内の競馬場の約半数が速歩競走専用となっており、平地競走や障害競走と並んで重要な競走となっています。賭け方には、ブックメーカー方式とパリミュチュエル方式の両方があります。主な馬産地はトリノ、シエーナ、ミラノなどで、サラブレッドよりも速歩競走用のトロッターの生産が盛んです。近年ではサラブレッドの生産頭数が減少傾向にあり、2009年の約1700頭から2014年には620頭にまで減少しました。

イタリア競馬の主な競走

イタリアの競馬には、クラシック競走、古馬競走、2歳馬競走など様々な競走があります。クラシック競走には、パリオーリ賞（イタリア2000ギニー）、レジーナエレナ賞（イタリア1000ギニー）、デルビーイタリアーノ、オークスドイタリア、セントレジャーイタリアーノなどがあり、いずれもG2またはG3に格付けされています。古馬競走には、ジョッキークラブ大賞、ヴィットーリオ・ディ・カープア賞、ミラノ大賞典、イタリア共和国大統領賞、リディアテシオ賞、ローマ賞などがあり、多くの競走がG2に格付けされています。2歳馬競走では、グランクリテリウムがG2に格付けされています。近年、イタリアの競走は、権威と賞金の両方において著しく低下しています。障害競走も存在しますが、平地競走ほど盛んではありません。

イタリアの主な競馬場

イタリアには、カパネッレ競馬場、サンシーロ競馬場、アニャーノ競馬場、カッシーネ競馬場、ナプレ競馬場など、いくつかの競馬場があります。これらの競馬場では、平地競走、速歩競走、障害競走などが開催されています。

イタリア競馬の経営問題と危機的状況

近年、イタリア競馬界は、ずさんな組織運営や売上の低迷に悩まされています。2009年には、長年にわたるずさんな運営が原因で、ヨーロッパ生産者基金（EBF）から除名処分を受けました。2010年には、UNIREがサンシーロ競馬場とカパネッレ競馬場での競馬開催を一時禁止しました。2012年には賞金カットに反発した関係者によるストライキが発生し、競馬開催が全面的に停止しました。その後、開催は再開されたものの、賞金未払い問題が再燃し、イタリア競馬の存続が危機的状況に陥りました。2014年には、欧州格付委員会（EPC）から除名処分を受ける危機に瀕しましたが、条件付きで存続が認められました。しかし、イタリア競馬の凋落は止まらず、2019年にはEPCの準メンバーに格下げとなり、GI競走も消滅しました。2020年には国際セリ名簿基準書における格付けもパート2国に降格しました。これらの状況から、イタリア競馬関係者は国外への活路を求めており、日本に拠点を移す者も出ています。 イタリア競馬の未来は依然として不透明な状況が続いています。

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