イタリアン (新潟)

新潟のソウルフード「イタリアン」とは

新潟県下越地方と中越地方で親しまれている「イタリアン」は、一見すると焼きそばのような、しかしどこか異なる独特のファストフードです。蒸した太めの中華麺を、モヤシやキャベツといった具材と共に炒め、ウスターソースで味付けした焼きそばに、トマトソースやミートソースといった様々なソースをかけたものが基本形です。名前から想像されるようなイタリア料理とは異なり、地元では長年愛され続けているソウルフードと言えるでしょう。

イタリアンの特徴

「イタリアン」の味わいの特徴は、比較的控えめな塩気と、トマトの甘みや酸味が前面に出たソースです。ソースの種類も豊富で、定番のトマトソースやミートソースの他に、カレーソース、ホワイトソース、エビチリ、麻婆豆腐といったバリエーションも楽しめます。また、フライドポテトや餃子とのセットメニューで提供されることもあります。

イタリアン誕生秘話

1959年、新潟市の甘味喫茶店「三日月」のオーナーであった三日月晴三氏が、東京で出会った大阪風ソース焼きそばにヒントを得て、「イタリアン」を考案しました。彼は、イタリアンスパゲティのイメージを取り入れ、フォークで食べるスタイルを確立しました。翌年、小学校の文化祭に出店したところ、その味が口コミで広がり、「三日月」の看板メニューへと成長しました。その後、同じく新潟県内の甘味処「長岡饅頭本舗」（現在のフレンド）でも販売されるようになり、両社が競い合うようにチェーン展開を進めたことで、地元に広く浸透しました。

みかづきとフレンドの個性の違い

同じ「イタリアン」でも、みかづきとフレンドでは異なる特徴があります。

みかづき: 角太麺のソース焼きそばに、トマトの酸味とタマネギの甘みが際立つソースをかけ、白生姜の千切りを添えてフォークで食べるスタイル。
フレンド: 丸い中細麺のソース焼きそばに、挽き肉入りのミートソースをかけ、紅生姜を添えて割り箸で食べるスタイル。

みかづきがフォークを使うのは、イタリアンスパゲティをイメージしているためです。一方、フレンドが箸を使うのは、イタリアンと餃子のセット販売がきっかけです。

商圏と競合

みかづきは新潟市を中心とした下越地方、フレンドは長岡市を中心とした中越地方でチェーン展開を行ってきました。長年、互いの地元には出店しないという不文律がありましたが、近年ではその棲み分けも崩れつつあります。

2003年以降、みかづきは中越地方に進出しましたが、現在は撤退しています。一方のフレンドも一時的に新潟市に進出したものの、現在は撤退しています。しかし、県央地域では両社の店舗が並存しており、互いに切磋琢磨しています。

両社は、互いの進出について「時代の流れ」と捉え、B級グルメブームを背景に、イタリアンの食べ比べを推奨しています。また、イベントや物産展などでコラボレーションも行い、イタリアン全体の知名度向上を目指しています。

全国展開への試み

みかづきとフレンドは、過去に県外のフードテーマパークやイベントにも出店し、その特殊性から注目を集めてきました。しかし、県外店舗は短期間で撤退するなど、定着には至っていないのが現状です。みかづきは大阪のフードテーマパークに出店した際、複数回人気投票で1位を獲得するなど高い評価を得ましたが、その後長野県へ出店したものの、短期間で閉店しています。フレンドもかつて群馬県に出店したものの、現在は閉店しています。

ドライブスルー発祥の地

フレンドの喜多町店は、1976年に開店した同社初のロードサイド型店舗で、ドライブスルーが設置されています。これは、創業者がアメリカのファストフード店のドライブスルーに触発され、車社会への対応を見越して導入したものです。日本国内のファストフード業界では、1977年に導入したマクドナルドよりも先駆けてドライブスルーを導入した店舗として知られています。

その他の動き

新潟県内では、「イタリアン」に影響を受けた類似商品も多数販売されています。

ピーコック: 自社オリジナルのトマトソースをかけた「イタリアン焼そば」を販売
小国製麺: 「みかづき監修 イタリアン」として家庭向けの商品を開発
栗山米菓: 原信との共同企画で煎餅「ばかうけ イタリアン味」を発売

また、新潟市西蒲区の商店街では、かつてラーメン店で提供されていた「ナポリ」や「カリーナ」を復活させ、新たなアレンジを加えて提供しています。コンビニやスーパーでも、それぞれ「イタリアン焼きそば」などと称した類似商品が販売されています。

県外では、大庄が「イタリアン新潟」を、福島県のトミーフードが「ミート焼きそば」を提供しており、それぞれ地域に合わせた形で展開しています。

類似した麺料理

新潟県以外にも、「イタリアン」に類似した麺料理が存在します。

山梨県: きねやが提供していた「ミート焼きそば」が、現在も一部の喫茶店で提供されている
滋賀県長浜市: 茶真商店が提供する「イタリアン焼きそば」が名物となっている

イタリアンが登場する著作物

「イタリアン」は、小説や漫画、アニメなどにも登場しています。

麺屋台ロード ナルトヤ!: 主人公の対戦相手が「イタリアン」を作る
うらバン!: 架空の都市に「みっかつき」というファストフードチェーンが登場
青春ぱんだバンド: 長浜市を舞台に「イタリアン焼きそば」を食べるシーンがある
艦隊これくしょん: 「イタリアン」がイタリア料理と勘違いされるシーンがある
NGT48: 楽曲の歌詞に「みかづき」のイタリアンが登場する

まとめ

新潟県民に愛されるソウルフード「イタリアン」は、単なる焼きそばではなく、地域独自の食文化を象徴する存在です。そのユニークな味わいは、地元民だけでなく、県外の人々をも魅了し、様々な形で進化を続けています。

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