イタリア・トゥッリタ

イタリア・トゥッリタは、イタリアを擬人化した女性像であり、しばしば寓意的に表現されます。彼女の名前にある「トゥッリタ」は「塔の」を意味し、その象徴的な特徴である城壁冠に由来します。この概念は、ゲルマニアやブリタニアといった、他の国を擬人化した像と類似しています。

イタリアを女性として描く伝統は古代に遡ります。特にローマ帝国時代には、女神として貨幣や像に盛んに登場しました。イタリアを象徴する女神は、石積みの城壁と塔が環状になった城壁冠を頭に戴いています。この城壁冠は、共和制時代から続く市民権制度を象徴していました。古代ローマ文明の滅亡後も、城壁冠は中世において、都市の自治権を象徴するものとして描かれ続けました。現在でも、イタリアの多くのコムーネ（自治体）で、市章や町章として使用されています。

中世・近世においても、イタリア・トゥッリタのイメージは受け継がれ、ミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァは自身の城に彼女を描かせました。この時代のイタリア・トゥッリタは、地中海地方の人々の特徴を備えた若い女性として描かれ、豊満な体格、生き生きとした赤い顔色、黒または茶色の髪、そして優美な顔立ちが特徴でした。

近代に入り、イタリアで民族主義が高まると、イタリア・トゥッリタはより頻繁に描かれるようになりました。イタリア統一後には、帝国主義的なプロパガンダにも利用されました。一方、共和主義の象徴としての側面も持ち、第二次世界大戦後の王政廃止を巡る投票では共和派によって使用され、現在のイタリア共和国でも肯定的に扱われています。

城壁冠以外にも、イタリア・トゥッリタは様々な持ち物と共に描かれることがあります。トウモロコシの実は肥沃さや農業経済を象徴し、秤と剣は正義を象徴します。リソルジメント後のイタリア王国では、ドレスにサヴォイア家の赤十字が描かれ、イタリア国旗を手に持っている姿が多く見られました。ファシスト党の独裁時代には、古代ローマのリクトルが持っていたファスケス（束桿）を手に持ち、ファシズムのシンボルとしても利用されました。

また、イタリア・トゥッリタの頭上には五芒星が輝いていることがあります。この五芒星はステッローネ・ディタリアと呼ばれ、イタリアの世俗的な象徴であり、国家の守りとしての意味を持ちます。イタリア王国成立以前の統一運動では、頭上に白い星が描かれ、1948年に制定されたイタリアの国章にも大きく描かれています。

イタリア・トゥッリタは、その歴史を通じて、イタリアの多様な側面を表現する象徴として、変化しながらも受け継がれてきました。

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