リクトル

リクトル（羅：Lictor）は、古代ローマにおいてインペリウム（軍事指揮権や行政権）を有する高官の護衛を主な任務とした役職です。共和政ローマ時代から帝政ローマ時代まで、長きにわたりその役割を担い続けました。

リクトルの起源と身分

リクトルは、エトルリアの伝統がローマに取り入れられたものと考えられています。当初はプレブス（平民）階級の屈強な者が選ばれていましたが、歴史を通じて解放奴隷が務めることが多くなりました。しかし、リクトルになるためにはローマ市民権を有している必要がありました。

リクトルの特権と給与

リクトルには、兵役が免除されるという特権がありました。また、帝政初期においては、給与として600セステルティウスが支払われていました。これは、当時のローマ軍兵士の給与の約3分の2に相当する額でした。リクトルは常に集団で行動し、「プリムス・リクトル」と呼ばれるリーダーが率いていました。

通常、リクトルは護衛対象となる要人によって個人的に選ばれましたが、時にはくじ引きで選ばれることもありました。

リクトルの義務と役割

リクトルの主な任務は、インペリウムを持つ要人の警護です。要人の行くところには常に付き従い、護衛の役割を果たしました。ポメリウム（都市の神聖な境界線）内ではファスケス（木の棒の束）を飾った杖を所持し、ポメリウム外ではファスケスに斧が追加された杖を携行しました。この斧は処罰の権限の象徴であり、独裁官のリクトルのみポメリウム内でも斧付きファスケスの携帯が許されていました。

リクトルは、要人の前で一定の規則に従って隊列を組みました。命令に備えて要人のすぐ前に位置するのが「プリムス・リクトル」の役割です。人混みの中では、要人のために人々を掻き分け、道を確保しました。要人は、自由都市を訪問する際や、より高位の要人と会談する際にのみ、リクトルの随伴を免除されることがありました。

リクトルの人数

リクトルの人数は、護衛対象となる公職によって異なっていました。以下に、役職ごとのリクトルの人数を示します。

独裁官：24人（ポメリウム内では12人。ただし、スッラのみ内外構わず24人従えた）
執政官：12人
前執政官：11人
騎兵長官：6人
法務官：6人（ポメリウム内では2人）
前法務官：5人
上級按察官：2人

また、ウェスタの巫女には、式典を執り行う際に1人のリクトルが付き従いました。

関連項目

リクトリア (小惑星)

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