ルドヴィーコ・スフォルツァ

ルドヴィーコ・マリーア・スフォルツァ（Ludovico Maria Sforza, 1452年7月27日 – 1508年5月27日）は、15世紀から16世紀にかけてミラノを統治したスフォルツァ家の当主であり、その生涯は波乱に満ちたものでした。彼はフランチェスコ・スフォルツァの四男として生まれ、兄ガレアッツォの弟にあたります。

通称「イル・モーロ（Il Moro）」としても知られ、この異名は「ムーア人（ベルベル人）」のように色黒であったことに由来すると言われています。彼は政治的な手腕に長けており、スイス傭兵を巧みに操り、ミラノの権力を掌握しました。また、芸術のパトロンとしても知られ、レオナルド・ダ・ヴィンチを庇護し、「最後の晩餐」の作成を依頼したことは特に有名です。

家庭と権力闘争

ルドヴィーコは、フェッラーラ公エルコレ1世・デステの次女ベアトリーチェと結婚し、後継者のマッシミリアーノ・フランチェスコを含む3人の子供をもうけました。同時に、彼は多くの愛妾を持ち、チェチーリア・ガッレラーニとの間に庶子チェザーレを、ルクレツィア・クリヴェッリとの間にジョヴァンニ・パオロをもうけています。

1476年、甥のジャン・ガレアッツォの摂政となったルドヴィーコは、事実上のミラノの支配者となりました。彼は甥とそのナポリ王国の王女の妻をスフォルツァ城から追い出し、権力を完全に掌握しました。この行動は、フォルリのリアーリオ家に嫁いだ姪のカテリーナ（ジャン・ガレアッツォの異母姉）との関係を悪化させました。

没落と裏切り

1499年、ルドヴィーコの後ろ盾であった神聖ローマ皇帝のハプスブルク家がフランス王国と対立すると、ルドヴィーコは神聖ローマ帝国側につきました。しかし、翌1500年にジャン・ジャコモ・トリヴルツィオ率いるフランス軍がスフォルツァ城を包囲し、ルドヴィーコもスイス傭兵を率いて対抗しました。ところが、ノヴァーラの戦いにおいて、配下のスイス傭兵が裏切り、ルドヴィーコは窮地に陥りました。

一部のスイス傭兵の助けで、ルドヴィーコはスイス傭兵に変装して脱出を試みましたが、500クローネの報酬に釣られたウーリ州の傭兵隊長ルドルフ・トゥールマンがフランス軍に密告しました。結果として、ルドヴィーコはルドルフの手勢に捕らえられ、フランス軍に引き渡されました。この出来事は「ノヴァーラの裏切り」として歴史に刻まれています。

捕らえられたルドヴィーコは、その後1508年まで投獄され、獄中でその生涯を終えました。彼の生涯は、権力闘争と裏切り、そして芸術への情熱が交錯する、複雑で興味深いものでした。

補足

ルドヴィーコ・マリーア・スフォルツァは、その複雑な人間性と政治的な手腕から、歴史的に様々な評価を受けています。彼はスイス傭兵を巧みに利用し、ミラノの権力を掌握しましたが、同時にその傭兵たちの裏切りによって失脚しました。また、レオナルド・ダ・ヴィンチを庇護したことは、ルネサンス文化の発展に大きく貢献しました。

彼の生涯は、権力と芸術、そして人間の欲望と裏切りが複雑に絡み合った、ドラマチックな物語として、後世に語り継がれています。

参考文献

傭兵の二千年史（菊池良生：講談社現代新書）

関連項目

スフォルツァ騎馬像

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