イタリア・リラ

イタリア・リラ：ユーロ導入までの歴史と経済的影響

イタリア・リラ (Lira italiana) は、2002年までイタリア共和国、サンマリノ共和国、バチカン市国で使用されていた通貨です。通貨記号は₤またはITLで、リラという名称は天秤を意味するラテン語の libra に由来します。イタリア語では「リーラ」と発音され、複数形は「リーレ」となります。

サンマリノ共和国では、20,000リラに相当する scudo という金貨単位も用いられていました。リラの補助単位はチェンテージモ (centesimo) で、1リラは100チェンテージモに相当します。

19世紀後半にはラテン通貨同盟に加盟し、フランス・フランなどと同等の価値を保っていましたが、第一次世界大戦と第二次世界大戦を経て、その価値は大きく下落しました。

ユーロへの移行と経済への影響

2002年1月、ユーロがリラに代わりイタリアの公式通貨となりました。リラのユーロへの交換レートは1ユーロ＝1,936.27リラと設定されましたが、実際には便乗値上げにより、多くの場合1ユーロ＝2,000リラという換算が用いられました。リラのユーロへの交換は2012年2月28日まで可能でした。

リラは比較的に変動の激しい通貨でしたが、ユーロはドルに匹敵する強硬通貨でした。そのため、ユーロへの移行は、輸出や観光に依存するイタリア経済に大きな影響を与えました。ユーロ高傾向を受け、一部からはリラへの回帰を求める声も上がりました。

硬貨

リラの硬貨は、1リラ、2リラ、5リラ、10リラ（アルミ貨）、20リラ（ニッケル黄銅貨）、50リラ、100リラ（ステンレス鋼貨→白銅貨）、200リラ（アルミ青銅貨）、500リラ、1000リラ（バイメタル貨）などが発行されました。しかし、インフレの影響で、ユーロ移行直前には50リラ以上の硬貨しかほとんど流通しておらず、それ以下の硬貨は主にミントセット向けに少量生産されるのみとなっていました。特に500リラ硬貨は、1958年には銀貨として少量発行されたのみで、広く流通するようになったのは1982年からのバイメタル貨からです。1000リラ硬貨は1997年の発行当初、ドイツの国境線が旧西ドイツ時代のまま描かれていたため、すぐに修正版が発行されましたが、ユーロ移行準備のため生産は早期に終了しました。

紙幣

紙幣は、かつては500リレの政府紙幣が存在しましたが、1982年にはバイメタル貨に切り替えられました。ユーロ導入直前には、1,000リラ、2,000リラ、5,000リラ、10,000リラ、50,000リラ、100,000リラ、500,000リラの7種類の紙幣が流通していました。

まとめ

イタリア・リラは、イタリアの経済史において重要な役割を果たした通貨です。その歴史、硬貨・紙幣、そしてユーロへの移行は、イタリア経済への影響だけでなく、通貨制度の変遷を考える上で重要な事例と言えます。 リラの変遷を理解することは、現代のユーロ圏経済、ひいては世界経済の理解にも繋がるでしょう。 また、リラ時代の硬貨や紙幣は、現在ではコレクターアイテムとして高い価値を持つものもあります。

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