イタリア国鉄ETR460電車

イタリア国鉄ETR460形電車：ペンドリーノの軌跡

イタリア国鉄ETR460形電車は、1993年からフィアット（現アルストム）によって製造された、ペンドリーノシリーズの一翼を担う車体傾斜式電車です。そのデザインは、著名なデザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロが手がけました。

ETR460形電車の特徴

ETR460形電車は、基本的に直流3kV電化区間専用の電車として設計されました。この点は、直流3kVと交流15kV 16 2/3Hzに対応するETR470形や、直流3kVと交流25kV 50Hzに対応するETR480形といった交直流両用形式とは異なります。ただし、例外的にトリノ～リヨン間の国際路線で使用される3編成のみ、フランス国鉄の直流1.5kV電化に対応した複電圧車としてETR463形の形式が与えられています。しかし、現在はその運用はされていません。

ETR460形は、主にトレニタリアの高速列車ユーロスター・イタリアとして活躍し、現在はフレッチャビアンカ（白い矢）として、イタリア国内の主要都市を結んでいます。

車体傾斜システム

ETR460形は、ETR450形と同様に強制車体傾斜システムを採用しており、最大8度の傾斜が可能です。これにより、曲線区間での高速走行時に乗客が感じる遠心力を軽減し、快適な乗り心地を実現しています。この車体傾斜技術は、高速新線の建設を必要とせずに既存の線路を活用できるため、導入コストを抑えることができるというメリットがあります。

しかし、その一方で、車体傾斜システムは複雑な構造を持つため、車両の維持費用がかさむという欠点も存在します。油圧式の車体傾斜機構は、先頭車に搭載された2つのジャイロスコープによって制御され、曲線の外側の軌道（カント）によって曲線を検知する仕組みとなっています。

ペンドリーノの波及

ETR460形をベースとした車体傾斜技術は、フィンランド、イギリス、スペイン、ポルトガルなど、多くの国で採用されており、世界各地でその技術が生かされています。ペンドリーノの技術は、高速鉄道の導入を検討する国々にとって、魅力的な選択肢の一つとなっています。

まとめ

ETR460形電車は、イタリアの高速鉄道史において重要な役割を果たした車両であり、その技術は後のペンドリーノシリーズや、他の国の高速鉄道にも大きな影響を与えました。曲線区間での高速走行を可能にする車体傾斜システムは、技術的な進歩を象徴するものであり、その活躍は今もなお続いています。

参考文献
* 鉄道ファン 2007年12月号　世界の高速鉄道 イタリアETR500とペンドリーノ　佐藤芳彦　132頁～137頁

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