イド・ド・ブローニュ

イド・ド・ブローニュ（Ide de Boulogne, 1040年頃 - 1113年）は、ブローニュ伯ウスタシュ2世の妃であり、カール大帝の子孫にあたります。彼女は下ロレーヌ公ゴドフロワ3世（2世）の娘で、ローマ教皇ステファヌス9世の姪という高貴な血筋を持っていました。信仰心が篤く、その慎み深い生き方から列福され、聖名祝日は4月13日とされています。

生涯

イドはマンステールビルザン修道院で教育を受け、17歳頃の1056年にウスタシュ2世と結婚しました。二人の間には3人の優れた子供たちが生まれ、夫妻は子供たちにキリスト教に基づいた教育を施しました。

イドは非常に信仰心が深く、ベネディクト会のノートルダム・ド・ベック修道院の院長であったカンタベリーのアンセルムスの精神的な指導を受けていました。彼らの間で交わされた書簡の一部は現代にも残っており、その交流の深さを物語っています。彼女は十字軍に参加した息子ゴドフロワの武運を祈り、聖地の聖遺物を入手しては、息子の保護下にある多くの修道院に寄進しました。彼女の信仰と慈善活動は、当時の社会において大きな影響力を持っていたと考えられます。

1087年に夫ウスタシュ2世が亡くなると、イドは所領と財産の管理を任されました。彼女はこれらの資産を貧しい人々を救済するために使い、教会や修道院の建設、修復に尽力しました。特に、彼女が教育を受けたマンステールビルザン修道院、ブローニュのノートルダム教会、サン・ウルメール教会は、彼女の支援によって大きく発展しました。ピカルディ地方には多くの修道院が彼女の支援によって建てられましたが、そのうちの一つであるサン・ヴァースト修道院に埋葬されました。その後、遺体は何度か移送され、最終的にはバイユーのベネディクト会派修道院に落ち着きました。

1478年、ルイ11世はイドをブローニュとその伯領の守護者と定めました。これは、彼女の生涯における信仰と慈善活動の重要性を裏付けるものです。

子女

イドとウスタシュ2世の間には、以下の3人の子供たちがいました。

ウスタシュ3世（1058年 - 1125年） - ブローニュ伯を継承しました。
ゴドフロワ（1061年 - 1100年） - 下ロートリンゲン公となり、第一次十字軍ではエルサレム初代聖墓守護者となりました。
* ボードゥアン（1065年 - 1118年） - 初代エデッサ伯となり、後にエルサレム王国の初代国王となりました。

イド・ド・ブローニュは、中世ヨーロッパにおける信仰と慈善の模範であり、その生涯は後世に大きな影響を与えました。彼女の遺産は、今日でも多くの人々に記憶されています。

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