イナゴマメ

イナゴマメ（蝗豆）について

イナゴマメ（学名: Ceratonia siliqua）は、地中海沿岸地域を原産とするマメ科の常緑高木です。ギリシア語でイナゴマメの果実を指す「keration」が、重さの単位「カラット」の語源になったとされています。和名のイナゴマメは、英語で種子を指す「Locust bean」の訳に由来します。

特徴

イナゴマメは高さ10メートル以上に成長し、温暖で乾燥した気候を好みます。葉は偶数羽状複葉で、互生します。雌雄異株であり、秋に赤い花を咲かせますが、花弁はありません。果実は細長い豆果で、動物の角やイナゴを連想させる形状をしています。果実が成熟するまでには約1年を要します。

利用

イナゴマメの豆果、果肉、種子は、食用、飼料、食品原料などとして幅広く利用されています。特に豆果と果肉は「キャロブ」として知られています。果肉は甘く、そのまま食べたり、乾燥させて食品原料にしたりします。種子は飼料として利用されることが多いですが、コーヒーの代用にもなります。種子には多糖類のローカストビーンガムが豊富に含まれており、食品添加物や化粧品原料として活用されています。また、イナゴマメの鞘から抽出されるピニトールには、血糖値の改善効果が期待されています。現在では、地中海沿岸地域だけでなく、アメリカ大陸などでも栽培されています。

歴史と文化

イナゴマメは、古代から地中海東部地域で食用とされてきました。古代エジプトでは甘味料として用いられ、サトウキビが利用される以前は重要な砂糖の原料でした。ユダヤ教の祭日「トゥ・ビシュヴァット」では、アーモンドや干しブドウと共に食べられています。イナゴマメは、新約聖書やタルムードにも登場します。新約聖書では、洗礼者ヨハネが荒野でイナゴと「野の蜜」（イナゴマメの鞘を指す）を食べていたと記述されています。また、放蕩息子のたとえ話にも、イナゴマメの鞘が登場します。ヨーロッパの多くの言語では、イナゴマメの鞘を「ヨハネのパン」と呼び、種子を挽いた粉を「ヨハネのパンの種の粉」として増粘安定剤などに利用しています。イスラム教のラマダーンの時期には、イナゴマメから作られた飲料が飲まれています。

イナゴマメの種子は、乾燥した状態で約0.2gと均一な重さであるとされ、重さの単位「カラット」の語源になったという説があります。しかし、実際には種子の重さにばらつきがあるため、宝石の取引に使われたかどうかは疑問視されています。

その他

関連語句として、キャロブ、ピニトール、タマリンドなどが挙げられます。

参考資料として、以下の外部リンクもご参照ください。

Integrated Taxonomic Information System (英語)
National Center for Biotechnology Information (英語)
* Encyclopedia of Life (英語)

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