イブラーヒーム (ウマイヤ朝)

イブラーヒームは、ウマイヤ朝の第13代カリフとして、744年10月3日から12月12日までの短い期間在位しました。彼の生涯については、生年は不詳であり、750年1月25日に没したことが記録されています。

イブラーヒームは、第6代カリフであるワリード1世の息子でした。兄であるヤズィード3世が急逝したため、カリフの座を継承しましたが、その地位は安定したものではありませんでした。当時、ウマイヤ朝の権力基盤は揺らいでおり、各地で反乱が頻発していました。

特に、第4代カリフ・マルワーン1世の孫であり、イラク総督であったマルワーン2世は、イブラーヒームのカリフ就任を認めず、反旗を翻しました。マルワーン2世は、ウマイヤ朝の有力な一族の出身であり、軍事的な手腕にも長けていたため、その反乱はウマイヤ朝全体を揺るがす事態へと発展しました。

イブラーヒームは、マルワーン2世の軍勢に敗れ、カリフの座を追われることとなりました。彼はパルミラへと逃亡しましたが、マルワーン2世の追撃は止まず、最終的には捕らえられたと考えられています。彼の在位期間はわずか6ヶ月足らずであり、その短い治世は、ウマイヤ朝の衰退を象徴するものとして歴史に刻まれました。

イブラーヒームの死因については、疫病によって35歳で亡くなったとされています。彼の死は、ウマイヤ朝の混乱に拍車をかけ、その後のアッバース革命へと繋がっていきました。

参考文献としては、アミール・アリの『回教史　A Short History of the Saracens』（1942年、善隣社）が挙げられます。この書籍は、イスラム世界の歴史を概観する上で貴重な資料であり、ウマイヤ朝の時代についても詳しく解説されています。

イブラーヒームの生涯は、ウマイヤ朝末期の混乱と衰退を象徴する出来事の一つです。彼の短い治世は、ウマイヤ朝の崩壊を早め、新たな時代の到来を告げるものでした。

もう一度検索