イボタ蝋

イボタ蝋について

イボタ蝋（イボタろう、英語：Chinese wax）は、昆虫から分泌される天然の素材であり、その特性からさまざまな分野で利用されています。本品は白から黄色がかった色合いの結晶質の物質で、ゼラチン質を含んでおり、水には溶けません。また、鯨蝋に似た性質を持っていますが、イボタ蝋の方が硬く、脆いのが特徴です。さらに、その融点も高いことから、特定の用途において有利に働きます。

生成方法

イボタ蝋は主に、中国やインドに生息する「ツノロウムシ」と、中国や日本に見られる「イボタロウムシ」と呼ばれる2種類のカイガラムシから得られます。これらの昆虫は、イボタノキ属の枝にその分泌物を積み重ねていきます。この堆積物を収穫し、水で煮ることによって蝋を取り出す工程が一般的です。この際、昆虫本体が底に沈むので、それらは家畜の餌として再利用されます。この製造方法は、古くから多くの地域で行われており、ハーバード・ビアズリーによる1932年の『ネイチャー』誌に報告された論文にもその詳細が記されています。

利用方法

イボタ蝋は、特にろうそくの製造に広く利用されています。また、寺院の絵画やその他の宗教的な儀式に関連する物品の製造にも欠かせない素材です。加えて、家具の艶出しや、掛軸の裏を磨く際にも用いられ、石と一緒に混ぜて使われることが多いです。

中国においては、イボタ蝋は医療目的でも利用されています。内服薬としては、しわがれ声や痛み、寄生虫によるトラブル、不安感、骨折の治療に使われています。外用薬としては、傷の治療に適した軟膏に配合されることが一般的です。日本でも、特に長野県の阿智村や喬木村周辺では、イボタノキの蝋を飲むことで咳が止まるという伝統的な民間療法が根付いています。

また、日本では会津地方が主要な産地であるため、「会津蝋」という名称でも知られています。この地域では特に、ハマグリの碁石（白色）の手入れに使用されることが多いです。このように、イボタ蝋は、自然から得られる貴重な素材として、文化的、実用的な側面を持つ重要なアイテムとなっています。

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