イラク暫定政権

イラク暫定政権：激動の時代を担った政府

イラク暫定政権は、2004年6月1日に発足し、2005年4月28日までイラクを統治した統治機構です。イラク戦争後の混乱期に、主権の委譲と民主的な政府への移行という重要な役割を担いました。

成立の背景

イラク戦争終結後、連合国暫定当局（CPA）による占領統治が行われましたが、イラク国民への主権委譲が急務となりました。そこで、政治プロセス（移行期間のためのイラク国家施政法）に基づき、暫定的な統治機構としてイラク暫定政権が発足しました。

この政治プロセスでは、CPAから暫定政権への主権委譲、暫定政権による制憲議会選挙の実施、それに基づくイラク移行政府の発足、恒久憲法の制定、そして恒久憲法に基づく議会選挙による正式政府の発足が計画されました。

暫定政権の首脳

暫定政権では、大統領が元首でしたが、その役割は象徴的なものに留まり、実務は首相が総括しました。当初、閣僚には党派色の弱いテクノクラートが想定されていましたが、最終的にはCPAのもとで実務を担当してきたイラク統治評議会が選出した人物が追認される形となりました。

主要な人物は以下の通りです。

大統領: ガーズィー・ヤーワル（スンナ派、アラブ部族指導者）
副大統領: イブラーヒーム・ジャアファリー・エシャイケル（シーア派、ダアワ党）、ロウシュ・ヌーリー・シャーウィース（クルド人、クルド民主党）
首相: イヤード・アッラーウィー（シーア派、イラク国民合意）
副首相: バルハム・サーレハ（クルド人、クルド愛国同盟）
外相: ホーシュヤール・ズィバーリー（クルド人、クルド民主党）

これらのポストは、統治評議会のメンバーや関係者によって占められたため、親米的な人選であるとの批判もありました。

暫定政権の主な出来事

2004年5月28日: イラク統治評議会が暫定政権を選出。
2004年6月2日: 暫定政権発足。
2004年6月28日: CPAから主権移譲、CPA解散。
2004年6月29日: サッダーム・フセインら計12人の起訴を宣言。
2004年11月8日: 米軍がファルージャへ進攻、クルド人自治区を除く全域に非常事態宣言。
2004年12月14日: 国民議会選挙へ向けた選挙活動開始。
2005年1月30日: 国民議会選挙の実施。
2005年2月17日: 選挙結果発表。シーア派が圧勝、クルド人が次ぐ。スンナ派はボイコットのため議席わずか。
2005年3月16日: イラク初の議会が召集。移行政府の選出を開始。
2005年4月28日: イラク移行政府が発足。暫定政権解消。

移行政府への移行

国民議会選挙の結果を受け、2005年3月にはイラク初の議会が召集され、移行政府の選出が始まりました。そして、2005年4月28日、イラク移行政府が発足し、イラク暫定政権は解消されました。

関連事項

イラク戦争
* 対テロ戦争

イラク暫定政権は、短期間ながらもイラクの民主化に向けた重要な一歩を踏み出しました。しかし、その道のりは決して平坦ではなく、多くの課題が残されました。この政権の経験は、その後のイラクの政治に大きな影響を与え続けています。

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