イラク治安部隊

イラク治安部隊の概要

イラク治安部隊は、2003年の米軍によるイラク占領後に旧イラク軍が解体されたことを受け、新たに編成されたイラクの軍事・治安組織です。この部隊は、イラク国防省の下にあるイラク軍、内務省の管理する警察と準軍事組織、各政府機関の施設警備部隊から構成されています。現在、イラク治安部隊は、約25万6,400人の軍事部隊、34万人の警察、国境警備隊に2万8,300人、施設警備300人を擁し、さらに民間軍事会社からの契約警備員として2万6,000人が活動しています。

一方、北部のクルド人自治区では「ペシュメルガ」と呼ばれる独自の民兵組織が存在しています。なお、実態としては、2014年末時点で、約5万人が“幽霊兵士”と呼ばれ、名目だけの給与を受け取っていることが発覚しており、組織内部の汚職問題も深刻です。

歴史

イラクはかつて、中東地域で軍事力が最も強い国の一つと見なされていましたが、1990年のクウェート侵攻を契機に始まった湾岸戦争で主要な戦力を失い、その後の経済制裁やイラク戦争によって、2003年にサッダーム政権が崩壊した際、多くの軍事組織が解体されました。戦後、治安悪化に直面する中で、新たな治安部隊の再組織化が行われ、外国軍や民間軍事会社の協力のもとで訓練が開始されました。

しかし、設立からの数年間は問題が多く、武器の横流しや幽霊兵士の問題、宗派間の緊張、さらには自爆テロの標的となる基地や人員募集施設が一杯にあるなど、様々なトラブルが頻発していました。それでも西側諸国の支援を受けた結果、治安部隊は段階的に強化され、現在では中東において有数の軍事力を保持しています。2011年以降、外国軍が撤退した後は、イラク国防を自国の力量で担うようになりました。

現在のイラク治安部隊

イラク治安部隊は国防省及び内務省の指導のもと、以下のような各部隊で構成されています。

イラク軍

イラク軍は、陸海空三軍から成り立っています。現在、陸軍は13個師団からなり、301,000人が在籍します。初期にはソ連や中国製の旧式装備から新たにM16A4やM1エイブラムス等の近代装備へと移行し、戦力を強化しています。

イラク空軍

イラク空軍は約3,000人の隊員を擁し、F-16戦闘機やC-130輸送機などを保有しています。今後は追加のF-16戦闘機の導入や対地攻撃機の整備が計画されていますが、まだ十分な戦力とは言えない状況が続いています。

イラク海軍

海軍は1,500人規模で、哨戒艦艇や海兵隊を擁し、バスラを拠点に活動しています。新たな海兵旅団の設立も進められており、国境や海岸の防衛強化が期待されています。

イラク警察・連邦警察

イラク警察は34万人から成る組織で、国内の治安維持に努めています。さらに連邦警察は、軍事作戦にも従事可能な準軍事組織として機能しています。

このように、イラク治安部隊は過去の困難や問題を乗り越え、自律的な防衛力を構築している最中です。今後も引き続き、イスラーム国(ISIL)の脅威や内政の安定に注力していくことでしょう。

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